■ 4


「あー、そうだ。お前さー、オナってイってみろよ」

 そして江西の体を仰向けに転がし、

「食い終わる前にイケたら残りやるよ」

 そう言ってパンを口に運んだ。

 江西はケホケホと詰まっていた息を吐き出し、痛みに震える手を股間に伸ばす。その指が萎えた雄に絡み、擦り上げる。

 目を閉じ、指先と雄の刺激に集中しようとした途端、鳩尾に卯城の足が踏み下ろされた。

「っあ! がっ……!」

 苦悶に顔を歪め、よろよろとうつ伏せになる。体を丸めながらそれでも股間を扱く手は止めない。

 卯城はその丸まった背を蹴りつけ、江西の髪を掴んでしゃがみ、額を床に押し付ける。ごりごりと江西の顔を床に擦りつけながら、着々とパンを食べていく。

「っふ、あ、っはぁ、あ、あ、っ……んん、ぅ」

 硬いコンクリートに押し付けられた額から血を滲ませながら、江西が呻く。その声色は苦痛よりも悦楽の色が強い。両手に包まれた雄も既に硬直して、先端を濡らしていた。

「おい、まだか? もう無くなっちまうぞ?」

 卯城の声に、顔を上げた江西の眼は鈍い光を宿して恍惚としていた。

「あ、ゃだ、まだ、待って……っぁ、あ、も……すこし、あ…、ぁ」

 パンの残りは四分の一、だろうか。江西の扱く手が速まる。ひっきりなしにか細い声をあげ、頬が紅潮していく。

 卯城は再び立ち上がると、江西の肩を勢いよく蹴りつけた。

「つ、あっ! っぅう、は、あぁっあ、あ、あ」

 江西は衝撃で一回転して呻き、痛みと快感にびくびくと体を震わせた。

 そして卯城は、横向きに体を丸めている江西の尻を蹴り、つま先を股間に突っ込み、会陰や袋をぐりぐりと踏みにじる。

「ひゃっ、あ! ゃ、いっ痛ぇ! っぁ、や、やめ……ぅ、あぁ! っぐ!!」

 ただでさえ弱いそこは、自慰の快楽に火照り、敏感になっていた。そんな場所を無造作に踏みつけられた衝撃に江西は体を縮め、あるいは仰け反って身悶え、一際強く踏まれた瞬間、吐精した。

「ひ、ああぁ! ……っふ、う…ぅ…っ」

 ひくひくと快感の余韻に震えながら、視線を上げると、卯城は既にパンをすべて平らげて指を舐めていた。

「あ……」

  それを見て、眉尻を下げて悲しげな声を漏らす。

 卯城は、江西の股間を踏んだつま先をまるで汚いものを擦り落とすように、江西の太腿に擦りつけて、それきり江西に興味をなくしたように背を向けて屋上を去った。

 残された江西は、ぼんやりと卯城の背を見送る。

 その姿が見えなくなると、のろのろと起き上がってぺたりと床に座り込み、白濁の散った腹を虚ろな眼で眺めた。

 しばらくそうしていたが、不意にその肩がひくりと揺れる。

 そして、

「ふ、ふ……、っははははははは、あは、あはははははっひゃはは、ひっ、ははっはははは!」

 ひとり、爆笑した。

 その声は狂気の色を孕んで屋上に響き渡った。そして不意にぴたりと笑い声を止め、ふーっと大きく息を吐いた。

「あー……楽しかったぁー……」

 ぽそりと呟いて晴れた空を仰ぐ顔は、満足そうな薄ら笑いで歪んでいた。

 やがて江西は立ち上がり、尻にぶら下がっていた服の切れ端を引き抜いて、腹の精液を拭う。

 そして制服を着ると、破けてしまったシャツと汚れた切れ端を丸めて抱え、卯城が捨てていったゴミや漫画を丁寧に拾い集め、校内に戻っていった。





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