最近、妖狐さまはお綺麗になられた…と、狐々(ここ)は思う。

 もちろん以前から美しいひとだったが、特にここ最近、何とも言えない艶のようなものが加わって、妖狐に見つめられるだけでこちらが赤面してしまうほどだ。
 しかし、その原因となっているのが人間の男だという事実が、狐々にはどうにも気に入らなかった。

 狐一族の誇り高き姫。憧れの妖狐。
 その妖狐が、よりによって人間の男、しかも坊主に懸想している。
 それは狐々にとって、どうにも我慢しがたい現実だった。

 (おのれ、生臭坊主。人間の分際で、私の大切なお姫(ひい)さまをたぶらかすとは)

 何としても許せない。
 狐々の胸は怒りに燃えていた。

 (こうなったら、私がその坊主にひと泡吹かせてやる。そうすれば、お姫さまの目も覚めるに違いない)

 狐々は崇高な使命感に燃えながら、妖狐の目を盗んでこっそりとお山を下りていった。


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