「取り敢えず、近くの喫茶店へ行こう」
それに賛成する。
風が吹くとはいえまだ季節は猛暑。シャツが背中に張り付くのは不快極まりない。
移動すると、その後を嬉しそうに少女もついてきた。






カラン、と古い鐘がなる。
ウエイトレスが席へと案内する。窓際の席。
クーラーの効きがいい席だと、明良が言う。
向かい合わせに座ると、明良の隣に少女が座り足をぶらぶらさせている。注文は何にしようかと悩んでいると、注文をとる前に、ウエイトレスはバックへと入っていった。

「注文をとらないのか?」
「待っていれば分かるさ」



暫くして、テーブルの上に大きなパフェが乗った。
結構な大きさだ。こちら側からだと、明良の顔が目だけしか見えない。
「通いつめてるんだな、お目当ての子でも居るのか」
「残念ながらこの喫茶店の看板娘は先月結婚したよ」
「残念だったな」
別に、と言いたげにパフェを口に含む。
食べ始めると、少女がどこからか戻ってきた。

「どこ行ってたんだ?」
「これ注文したんだよ」
まさか、と目を疑う。でも、現にウエイトレスは少女が見えているらしく、手を振っている。
先ほどの『俺以外皆見えるんだな』はそういうことだったのか。

「どこ行っても、お子様連れなんだよ」
まいった、と言いつつパフェを完食する。



「どうしたいんだ」


その言葉に、明良が目を伏せる
「どうすれば、この子は満足なんだろうな」
明良の横で、笑顔で居る少女。明良を見ながら微笑んでいる。




「俺は救ってやれないからな」



――――俺も救えないさ
それを、強く、飲み込んだ。
形になってしまうみたいで、事実だとしても…否定したかった


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