我ながら、己の頭の巡りの良さに感心してしまう。あの若い茶髪坊主の驚きうろたえる間抜け顔を想像して、そのあまりの愉快さに、思わず声を出して笑ってしまった。
 だが、

 「やめておいたほうがいいと思うよ」

 背後から突然そう囁かれて、少女は文字通り飛び上がって驚いた。ゆうに三メートルぐらい飛びのいて、寺を囲む塀に背中がぺたりと張り付いた。

 「だ、だだだ、誰だ?」

 冷や汗を流しながら少女が声の主を見上げると、年若い男がぼんやりと少女を見下ろしていた。

 「息子はともかく、ここの住職はそれなりの霊力の使い手だよ。下手に悪戯なんかしようものなら、君ではとても太刀打ちできないと思うけど?」

 のんびりとした口調でそう言う男を、少女は呆気に取られたように見つめた。


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