Piece4



「何を、とは何だ」
「ウィルっつったか。ジギーの連れの奴に、名前聞かれてたろ。その時だよ」
 サムナは前方からわずかに視線をずらし、ギレイオに向ける。
「よく聞こえていたな」
「俺は地獄耳でなあ。で、何を?」
 サムナはあまり間を置かずに「特には」と答えた。
「ここで名を明かせば、重討伐指定であることがばれると少しは考えた。だが、彼らにはあまり意味のなさそうなことだと思って、答えた」
「それ以外には?」
「質問の意味がわからん」
「自分の名前がわからない、名前を聞かれた理由が理解出来ない、色々ある」
「どれも意味のない問いだ。おれはおれの名前がわかるし、聞かれた理由は……」
 そこまで言ってから、サムナは口を閉ざした。ギレイオが少しだけ体を浮かして相方の表情を窺おうとすると、大きな瘤に乗り上げたらしく、車が派手に跳ねる。その衝撃で社外に飛び出そうになったギレイオは、暴れまわる心臓をなだめながら、車のフレームにしがみついた。
「お前、答えたくないなら答えたくないって言えよな……」
 違う、とサムナは答える。
「聞かれた理由は、おれにもわからない」
 ギレイオはわずかにほっとしたような顔になり、再び助手席に寝転んで顔に砂避けの布を被せた。そして、その下からくぐもった声で指示を飛ばす。
「飛ばせ飛ばせ、さっさとタイタニアに行くぞ」
 わかった、とサムナはアクセルに力を込める。
 何者も存在し得ない荒野を、車は轍を残して疾走した。



Piece4 終

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