Piece4
「絶対来んな」
「何だよ。オマエにそんなコト言える権利あるのか? あるなら是非ともこのオレ様に見せて頂きたいねぇ」
ジギーはにやにやとした表情を崩さない。ギレイオをからかっているのは明らかだが、これに対してギレイオは溜め息をついただけだった。
さしたる反応も見せない腐れ縁に飽きたわけでもないが、ジギーは気持ちを切り替えるように「まぁ」と言って続ける。
「オマエがいくらイヤがったってな、いつかまた会うんだ。縁っつーのはそーいうモンさ」
軽い調子で放たれた言葉は、いつものようなからかいとはまた、別の所から飛び出た言葉だった。ギレイオは答えず、ジギーがハンドルを両手で握りなおしたのを見て、一歩離れる。
バギーの軽快なエンジン音は、二人の出発を意味した。その時、ウィルが思い立ったように顔を上げ、車体から身を乗り出してサムナへ視線を向ける。
「あの」
サムナはウィルへと顔を向けた。
「名前、何ですか?」
「名前?」
言葉を反芻し、少し考えた後に答える。
「サムナだ」
太陽は朝の装いを捨て、青空には羊雲がぽつぽつと浮かんでいる。
ようやく、彼らの一日が始まろうとしていた。
「……お前、何を考えて答えた?」
助手席を倒し、寝転んだままのギレイオが問う。運転席ではサムナが片手でハンドルを握っていた。
危なげのない運転で街を出発し、荒野を疾走する中、聞こえるのは車が大地を蹴る音と、耳の傍を流れる風の音、そして時折、車が軋む音だけである。人の声というものは、そういう光景の中で際立って聞こえるものだった。
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