Piece15



 ラオコガとの話し合いの席は、あの遺跡と違う場所を指定されていた。朝から人気のない遺跡群に、わらわらと人が集まっていては怪しまれるのだろう。だから活動は夜に限られる。後ろめたいことをしている、という自覚は確かにあるようだった。
「しかも、それぞれちゃんと仕事を持っている。その稼ぎをおろそかにしたら、後ろめたい活動も何も出来ないだろう」
「……」
 正論だが、何かが間違っていた。とは言え、ギレイオがそれを追及出来る立場にはない。
 朝から開いている食堂を指定したラオコガは、朝食ついでに話をまとめてしまおう、ということだった。しっかりした体躯にふさわしい量の食事を採りつつ、その半分以下の量であるギレイオを見つめる。
「それで足りるのか? 冒険者なんだから、もっと必要じゃないのか」
「てめえほど筋肉馬鹿でもいられねえんだよ。なんだ、その冒険者なんだからってのは」
「そっちの相棒は何もいらないのか?」
「朝は食べねえ主義なの。いいからさっさと食っちまえ。お前だって、その稼ぎってやつをおろそかにしたくねえだろ」
「食いながら話すのは得意だから、その点については心配いらない」
「……いいから本題入れよ……」
 まだ聞きたそうにしていたが、うんざりとした表情で食事を進めるギレイオを見て、ラオコガはとりあえず質問の山を大きな体の中に引っ込めた。これから大きな仕事を共にするのである、世間話の話題はいくつか取っておいた方が無難だと考えた。
 パンをちぎり、フォークでかき集めた炒り卵を挟んで大きく頬張りながら、ラオコガは確かに器用に話を進めた。
「俺たちが狙う隊商は割と手広く動いている連中でな、北から西、中央を通ってここに抜けて、また北に戻る。大陸の半円をぐるぐる回ってる感じだな」
「さすがに南は避けて通るってか」
「神殿騎士団の総本山だからなあ。そこまでの根性があるなら、こんなせこい商売はしてないだろう」
「それがいっちょまえに隊商のツラして歩いてんなら、この大陸も平和だね」
「おおむね平和なほうだろう。一昔前みたいに人間同士の争いがあるわけでもないし」
「喧嘩する相手が変わったってだけだろうが。まータチの悪い、いざこざは減ったってのは認めるけどな。そんで? 他には」
 ラオコガは最後のパンの一塊を一気に口に入れ、スープで流し込む。そして残った野菜を手際よく集めて口に運んだ。
「まあ、よくある形だ。商人の一団を中心に、他は全て護衛。護衛の顔ぶれはどうも悪人面ばかりらしいが、それも大して驚くことじゃないだろう?」
 ギレイオは頬杖をついて、面白くなさそうに「まあな」と答えた。ここまで話を聞いた限りでは、特に目新しい情報はない。

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