Piece1



 通りに向かって壁一面を解放している明るい店だが、昼食時を過ぎた今は客の姿もまばらだった。早々に昼食を取って、港へ仕事に行く者が多いのだろう。
 店内に反して、通りは活気に満ちていた。港から下ろした荷物を抱える者、港へ荷物を運ぶ者と、日よけのない場所で働くからか、日焼けした男が多い。そのどれも賑やかに言葉を交わしていくものだから、道一杯に喧騒が押し込まれているようだった。大きな港とはこういうものか、と妙に感心する。
 アクアポートならではの光景を黙って眺めていた二人だが、その中で異彩を放つ集団を認めて目を細める。
「……何だあれ」
 眉をひそめて見る。ギレイオの問いに、サムナが端的に事実を述べた。
「騎士だな」
 行き交う人々の中に騎士や、そうでなくとも剣や斧を帯びている人間が混じる。アクアポート近くに軍の駐屯地があるのは聞いていたが、軍の関係者と考えるには彼らの格好はあまりにも自由すぎた。
 ギレイオは、ちょっと、と近くのウェイターを呼ぶ。
「何だ、あれ」
 ちらりと外を見て、ウェイターは簡潔な質問に簡潔に答える。
「騎士だね」
「じゃなくて、何であんなのが集まってる」
「“異形なる者”がここに向かってるんだよ。それも大群で」
「旅行でもすんのかよ」
 笑えない冗談に、ウェイターはさっと眉を吊り上げた。
「馬鹿言うな。あいつらのせいで、小さな街が壊滅したこともあるんだぞ」
 うるさそうに顔をしかめるギレイオに代わり、サムナが口を挟む。
「すまない。軍はどうした? 近くに駐屯地があるだろう」
「あるけどさ……」
 口ごもるウェイターの後ろから、客らしい赤ら顔の男が話を継いだ。その口からは酒の匂いが漂うものの、愛嬌のある顔は話好きのする雰囲気を漂わせる。

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