060.召し上がれ(7)


「その、人間のスクラウディオ様はお一人で来られたのでしょうか?」

「どうかなあ。スクラウディオは本当に真面目だから、多分、傍にいると思うよ。人間のスクラウディオを一人にしておけば、皆がよってたかって話を聞きたがるだろうしね」

「暇と健康と金があると、誰でも噂に飢えるんだな。吸血鬼になってよくわかった」

 耀がしみじみと言うと、ナイリティリアはくすりと笑う。

「私もつい最近、こちらの世界に入ったものですから思うのですけれど、私たちにとってあなた方は絶対になるのです。人間のスクラウディオ様は少々特殊なお方でしょう?だから、そのような方にとって、吸血鬼のスクラウディオ様はなくてはならない方だと思うのです。それが、そっとお傍で支えられているのだと思うと、ちょっと嬉しくなりました」

「嬉しい?」

 ヴェルポーリオが問う。ナイリティリアは大きく頷いた。

「だって、私もそうありたいと思うのです。ナーティオ様がいらっしゃらなければ、私は外へ出ることも叶いませんでした。……だから、ナーティオ様のお傍にいられる限り、私はナーティオ様を支えたいのです」

「……こりゃまた、大胆な愛の告白だな」

 ガルベリオが思わず呟くと、いつの間にか聞いていたナーティオは耳まで真っ赤になり、イーレイリオは茶化すネタが出来たとばかりに、にんまりと笑う。告白したナイリティリアはいつものように、聖母そのものの笑みを浮かべた。余裕の笑顔にも見えた。

 どもりつつも一生懸命、抗議しようとするナーティオの周りでイーレイリオがはやし立て、それをナイリティリアは和やかに見守る。そんな三人を見ながら、耀はヴェルポーリオに話しかけた。

「……お前が茶化さないなんて驚いた」

「どちらのスクラウディオも友達だからね。友達のことを良くとらえてくれる人の言葉を、おれは茶化さないよ」

「へえ」

「大丈夫、親友はお前だけだから。拗ねなくていいよ」

「拗ねてねえよ。どこまでも前向き思考だな」

 うっとうしそうに顔を歪めて答えていると、広間から甲高い声がヴェルポーリオの名を呼んだ。声の主に思い当たって、耀は更にうんざりと、ガルベリオは苦笑して広間を振り返る。黒を基調にしたドレスに身を包んだ少女と、正装した少年がやって来るところだった。

「久しぶり、アルフィーリア。アルファリオ」

 アルフィーリアはガルベリオの挨拶など気にも止めず、一直線にヴェルポーリオの前に歩み寄ると、指をつきつけた。

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