030.いろは


 いずこも同じ

 楼閣よりの眺め

 晴れたる天

 匂いたつ花々

 微笑む人々

 笑みを絶やさぬ日常

 怒号の聞こえぬ日常

 血の香りを

 理由もなく求める

 額づく神はもういない

 流刑囚たるこの心を

 をまえたちは知りようか

 忘れゆく戦

 我も通せぬ平和

 世は泰平、しかして

 たがための世

 劣悪なるかな人の性

 属することで得る安寧

 月の冴えたる光をも

 眠る民には聞こえもせぬ

 なにゆえこの泥の中

 楽観なるかな平和の海

 夢想なるかな泰平の大地

 失われて知る

 いくつもの虚構

 覗きし人に

 押し包み渡される真実

 曲事(まがごと)、善事(よごと)

 矢の如く通り過ぎ

 待たれとかけたる声も

 消しゆく平和

 風雅なるかなこの楼閣

 心を知らぬこの優美

 得られぬ休息

 手より零れゆく

 あさましき願い

 さても知りえぬ我が心

 昨日と変わらぬこの眺め

 夢に溺れる民の顔

 目にすること叶わぬ戦士たち

 自らの命を投じ

 自今の世を作りたる

 笑みの絶やさぬ日常

 悲観を知らぬ

 もし聞き給うなら

 戦地にて散った戦士たちよ

 瑞雲となりてこの楼閣に来よ



終り


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