079.賽は投げられた(2)
「キリがねえや。このへんだけでも綺麗に見えるように草むしりに入るが、文句あるか?」
「構わない。ここまで本格的に綺麗にしてくれたのは、お前が初めてだ」
「あ?……そういや、他にも誰か来たことがあるような言い方してやがったな」
「うむ。皆それぞれに、この庭でいい働きをしてくれた。彼らのお陰で噴水や小屋を見つけることも出来た。だが不思議なことに、誰も庭の木々を本格的に手入れしようとする者はいなかったな」
「……俺だって、こんな庭が仕事で来たら割り増しで料金取るよ」
「だから、ありがとう。これでぼくも散歩する場所が広がる」
タオは照れくさそうに目を細めて、神さまを見た。
「そりゃどうも。で?俺の前の連中はどこ行ったんだよ。今んとこ見たことねえが」
「彼らはいつかは出て行く。遅かれ早かれ、必ず。お前もいつかは出て行くだろう」
「出れんのか?」
「時が来れば出て行ける」
「出て行った後は?そいつらどうしてんだ」
「この庭から出て行ける者なら、心配はいらないと思う」
「何の根拠があって」
「根拠?……ぼくは神さまだからと言えば、お前は怒るだろう」
「今だって怒りてえよ。わかった、とりあえず俺もいつかは出て行けんだな」
「無論だ」
「俺は草むしりしてるから、てめえはこのゴミを門に持ってけ。あまり一気に持ってこうとすんな。ハンドルを持ってかれる」
伏せてあった一輪車を起こし、その中にぱんぱんに詰めたゴミ袋を入れた。中に入っているのは枝と葉ばかりといっても、これだけ詰め込めばそれなりに重い。一輪車を扱ったことのない神さまには、三個ほどで精一杯だった。
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