073.省エネ(1)
「……たいようこう?」
マキが発見した小屋の屋根に上り、せっせとソーラーパネルを設置する運び屋を眺め、神さまは要領を得ない様子で問う。
「太陽の光ですよ。それを吸収して電気を作り出すんです。そうですよね、運び屋さん」
「そうそうマキちゃん。やっぱり若い子は理解が早いねえ」
設置を終えて、運び屋は屋根から降りてきた。
「それも運び屋の仕事なのか?」
「そう言われちゃうと困りますけどねえ。贔屓にしている電器屋からこれの電気効率のモニターをするように言われましてね。これが結構いいお金になるんです」
「運び屋さんって働き者なんですね」
「そんなに褒められると嬉しいなあ。ここへ通うようになって、そんなこと言われたの初めてだよ」
「ぼくはいつも感謝しているつもりだが」
「神さまの感謝は見えにくいところにあるので、僕には見えないんです」
「そうか……それでは今度から考えないといけないな」
「いやいや。無理はしないで下さい」
「ところで、あの板が太陽の光を吸収して、どうしてその電球が光るんだ?」
小屋の外壁に小さな電球が取り付けてあった。
「まあ詳しいことは省いて、そういう風に出来ているんですよ、神さま。省エネというやつです」
「しょうえね?」
「エネルギーを節約しようという言葉を縮めたものです」
「ほう。つまり、あの板一つでそれが出来るんだな」
「そういうことです」
「いよいよ、この庭にも近代化の波ですよ!」
「ふむ。それは結構なことだ」
「いやいやマキちゃん。それはちょっと気が早い」
「でもこれだけ広大な庭なんですから、やっぱりお屋敷の中もそれなりにしないと駄目だと思います」
「うん、そのお屋敷は見つけられた?」
「まだです!実は倉庫も見つからないので、草むしりしか出来ないんですよね」
「ああ、そのことで聞きたかった。草刈り機という代物があったはずだが、知らないか?運び屋」
「知ってますとも。それなら二ヶ月ほど前に錆だらけで発掘されて、僕が処分しました」
「そうか、それは残念だな」
「この庭に近代化はちょっと早いかもしれませんねえ。そもそも電源も生きているかどうかわからないんですから」
「そうだったんですか?」
「マキちゃん、気付かなかった?実は僕もまだ、ここの電源を見つけたことがないんだよねえ。だからお屋敷の捜索ついでに見つかったら、教えてね」
- 136 -
[*前] | [次#]
[表紙へ]
1/2/3/4/5/6/7/8
0.お品書きへ
9.サイトトップへ