第二十八章 帰還



 ただ静かな表情で見下ろしていたリミオスがぽつりと呟く。

「これが、簡単に解けるはずの呪いに見えるかい?」

 息を飲んでライはリミオスを見つめ、それからカラゼクへと視線を戻した。

 二の句の次げないでいるライの前でカラゼクの体は段々と蘇りを果たしていく。頬には血色が戻り、深く突き刺さった矢が僅かな動きを見せたかと思うと、それはカラゼクの体が矢を押し返しているのだった。

 イーク共々、言葉を失って見入るライの視界の端でリミオスが動きを見せる。

 彼はカラゼクが投げ捨てた剣の元に歩み寄り、それを手にとって感触を確かめた。

「私は剣を振るうのが苦手だ」

 何回か柄の握り具合を確かめた後、剣を大きく振って、驚きの表情を浮かべるライを見据える。

「立て。そして剣を取るんだ」

「あんたの兄さんがこんなことになってるのに、まだそんなこと……!」

「私がそうなっても、兄さんは私と同じことをやるだろう。私たちの思いは一緒だからね」

 リミオスの低い声が響き渡った。

「君の言う可能性を、君自身が試すといい。私は自分の意志を試す」

「……そうしたら、諦めてくれるのか」

 ライが問うと、リミオスは静かに笑った。

──この笑顔。

「君次第さ」

 それはかつてライを王城に迎えた時、リミオスが浮かべた穏やかな笑みに似ていた。



二十八章 終り

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