第二十七章 僕は
「サークを後衛にすればいいんじゃないかな」
「後ろから攻撃されたらどうする」
「じゃあ、ヴァークとサークが一緒の馬に乗れば」
「却下。お前に死なれたら困る」
「……頑固だなあ」
溜め息と共にそう言い放つと、ヴァークはアスを睨んだ。
「俺はサークの兄貴だ。弟を守る義務がある」
彼の言には頷けるところがある。教会でも年長者が年少の者を守り、指導するような風潮があった。教会でのその繋がりは血によるものではないにしろ、それ以上の想いがヴァークにもあるのはわかる。
だが、サークの言葉にも頷けてしまうのだから仕方がない。サークがいなければ無鉄砲に戦場を駆け回りそうな気がするのは何も、彼のみが持つ危惧ではなかった。
「……その兄貴が死んじゃったら、意味がないってことはわかるよね?」
ヴァークは気まずそうに視線を反らした。
「じゃあ、戦場の真っ只中には連れて行かないけど、戦場が見える所まではサークも一緒に行くのは?ヴァークには私と一緒の馬に乗ってもらって、サークはその馬で後ろから付いて来てもらうようにして」
目を閉じたヴァークは如何ともしがたい顔で頭をかく。それが肯定の印であることは、これまでの付き合いでわかることだった。
「サークも、ヴァークが心配するのはわかるだろう。だからこれでいいね?」
多少、不服が残るようだが、サークもゆっくりと頷く。
アスの仲裁により兄弟喧嘩は終幕を迎え、どうにかこうにか自分を納得させたサークが馬を降りた時、これから行こうとする戦場で砲声が上がるのを聞いた。
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遮る物のない草原は確かに騎馬兵向きだが、それと同時に敵の全容が見えすぎるのも考え物だな、と馬に跨りつつライは思った。
「……エルダンテにあんなに兵士がいたなんてな」
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