第二十六章 記憶



 あの時は聞き間違いと思ったが、カラゼクとリミオスの関係が知らされた今なら全てが線となって繋がる。

 ただ一つだけ、その線を邪魔するのが年齢の計算だった。

 オッドの記憶の中で聞いた話だと、イークは予言書が完成される以前、既に将軍となっていたようだ。だが一方でイークは、アスが生まれて間もない頃、故郷を焼き討ちにしている。その時も確か将軍職についていたはずだ。

 そうであるなら、現状の姿は年数に合わない。

 アスの疑問に気付いたリリクがそれを肯定するかのように、そうよ、と頷いた。

「それがヘイルソンとの契約。イークはあんたが生まれるよりもずっと昔、リファムとエルダンテの戦場でヘイルソンと契約したのよ。リファムを必ず大国にするから、人には負けぬ力と命をくれってね」

「……じゃあ、イークは」

 リファムとエルダンテが戦争状態にあった時など、随分と昔の話である。それが初期であれ末期であれ、予言書の完成以前なら相当な年数を遡ることになる。

 ヘイルソンとの契約が彼の力を増し、命の期限を人並み以上に伸ばしたのであれば、イークがいつも言葉を濁していた「過去にあった色々」とはこれを指すのだろう。

「イークは一人でずっと、リファムを見てきたのよ。裕福だった時のリファムも、衰退したリファムもあいつは知っている。リファムこそ自分が生きて死ぬべき場所とでも思ってるんでしょうね」

 いささか感傷的になりつつリリクは言うも、でもね、と強い口調でその空気を断ち切った。

「結果的に長生きになったんなら、少しくらいこっちの気持ちもわかるってもんじゃない?それを自分には力がないだの人には絶望しただの、うじうじうじうじ愚痴ってさ。挙句の果てにはお前らにはわからないって。ヘイルソンと契約した度胸はどこ行ったっての、全く」

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