第二十五章 奪還



「……大変なご無礼をし、謹んでお詫び申し上げます。国王陛下が玉座の間にてお待ちとのこと、そこの者が案内を致しますので、お連れの方々と共にいらっしゃるようにとの仰せにございます」

 仰々しい言葉遣いに、ようやくライも事態が変わったことに気付く。すると、その心を代弁するかのようにバーンが声を上げた。

「その通り。王様が戻ったんだよ。オレらの出番がなくって悲しいもんだ」

 肩をすくめるバーンの横でイルガリムが小さく笑って言葉を継ぐ。

「お前たちはバーンと合流してイークの元に行け。私は城に戻って皆にこの事を伝えてくる」

「あ、じゃあおれも」

 立ち上がったジャックが顔を上げて言う。

「行かないのか」

「真面目な話になりそうじゃねえか。おれはそういうの苦手なの。ライに任せた」

 任せられても、という渋い顔をするライの肩を叩き、軽快な足取りで崩壊した城壁へと向かう。どうやら本当に苦手らしい。

 顔を見合わせて息をついた二人は剣をしまう。不気味なほど静まり返った庭で、案内役の兵士が前に進み出た。

「こちらへどうぞ。陛下がお待ちです」

 秩序の戻った城が明るくなり始めた空を背負う。本当の主を迎えた城は嬉しそうに、朝日を反射した。


+++++


 玉座の間に着くと既に人払いがされており、イークが横たわるベリオルを見下ろしていた。静かな夜明けを迎えたそこは、城内に人がいることを疑問に思わせるほど、しんとしている。過去に同じ感覚を覚えたことがあるアスは、その静けさがあの時とは違うことに気付いた。

 一礼をして案内役が去るのを見計らい、何かを吹っ切るかのようにイークが振り返る。

「手間をかけたな。大変だったろう」

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