第二十五章 奪還



「イークたちは大丈夫かなって」

「大丈夫だろ。一般人よりは丈夫そうな奴らだし」

 確かにな、と内心で大きく頷く。

 湖を抜けた所で彼らは二手に分かれ、当初の作戦通りに行動を開始した。

 リファムの王城を後にした過去が随分昔に感じられ、明かりを所々に灯した王城の姿が近くなるごとに懐かしく感じるのだから、不思議なものだ。あの時はカリーニンも共にいたから、特にそう思うのだろう。

 腰紐に通した腕輪は馬の動きと共に軽快に跳ね、自身の存在を主張しているようだ。共に、自分の腕におさまっている腕輪も暖かい。味方でいる、という言葉がアスを守っているかのようだった。

 段々と王城の城壁の輪郭も明らかになり、歩哨を歩く兵士の姿も見え始め、先を行くジャックが手を上げて速度を緩めるよう合図をする。

 各々、速度を緩めた馬にまたがりながら城壁に近づき、遠目に裏門を守る兵士の姿が見えた所で馬を下りた。手近な木に馬を繋ぎ、茂みの中に身を隠す。

「イークたちはぼちぼち地下牢に着いてる頃か?」

 暗闇の中で顔を突き合わせ、ジャックが問うた。

「地上を行くより近いから、もう着いてると思う」

「しかし、『時の神子』様様だな。本当に魔物に会わないから驚いた」

「ジャック」

 鋭くたしなめるライにアスが苦笑した。

「本当のことだからいい。それでどうする」

「裏門には兵士が二人か」

 僅かに首を伸ばし、ライが様子を窺った。荷馬車一つが通れればいいような裏門には、かがり火の下にそれぞれ兵士が一人ずつ配置されている。

「兵士二人を俺とジャックで片付けて、その間にアスが入り口を開くっていうのは」

「門の外で騒ぎが大きくなりそうじゃねえか?それに悪いけど、あんまりおれをあてにするなよ」

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