第二十四章 片翼



 緑の多いルマーからリファム西部への侵入はイークの言った通り、森に紛れてしまえばわからないが、それこそ人相手に限った話である。常ならば不法入国を取り締まる兵士がいるはずだが、おそらく彼らもエルダンテ侵攻に借り出されているのだろう。

 常識を超えた、移動する城という不審極まりない物体の侵入は簡単に許された。

 だがここで許されたとて、リファム王城への侵入が許されるわけではない。必要最低限、それも王城を守るのにそれなりの手練れは残されていると考えた方が無難である。

「だから、私がそういう風に命じた」

「そういうって」

「身分の証を立てられぬ者は入れるべからず、強硬手段に打って出る者へは武力を以てこれを排除せよ。早い話が、不審者の首ははねろということだ」

 それならばこの城もここに巣食う人物たちも、排除の対象になるというわけだ。

 剣をおさめたイークはにやりと笑ってみせる。

「西を固める者たちは私が選んだ精鋭だからな。おそらくはじじいどもと王城を守る為に残っているはずだ」

「……その割にはすんなり入れたね」

 二人の会話に新たに参入する声がある。渡り廊下に面する階段をアスが上ってきた。ヴァークらと同じ外套を身につけているが、その下は胸当てや手甲など完全に武装を済ませている。

 その姿を認めたイークは腕を組み、鼻を鳴らして笑った。

「十中八九、罠だろう。まるで、さあ来いと言わんばかりの歓迎ぶりだ」

「罠とわかってて行くか普通……」

 呆れ声で呻くライに反し、アスは素早く言葉を発した。

「ベリオルだと思うから?」

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