第十五章 岩窟の処女



 弟の目はいい。精霊を見る力が突出している所為だろう、その他の力の流れに関してもおそろしく敏感だった。

 だからサークの言う「同じ」とはそのまま、言葉通りに受け止めていい。

 カリーニンには、あの三人と同じ力が流れている。それも弟の目にようやく留まるほど微弱なものだが、これまでの話を総合すれば無視出来るものではない。

──「天」の遣いだからね。

 ソンの言葉が耳の奥に蘇った。

「……じゃあ、カリーニンは」

 ヴァークは思わず腰を浮かし、扉を振り返る。

 そ知らぬ顔で閉ざされた扉は、ほんのりと温かみを帯びていた。その扉に向かってヴァークが小さく呟いた声を、風が掻き消す。

 あんたは何なんだ、と。



十五章 終

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