第十五章 岩窟の処女
弟の目はいい。精霊を見る力が突出している所為だろう、その他の力の流れに関してもおそろしく敏感だった。
だからサークの言う「同じ」とはそのまま、言葉通りに受け止めていい。
カリーニンには、あの三人と同じ力が流れている。それも弟の目にようやく留まるほど微弱なものだが、これまでの話を総合すれば無視出来るものではない。
──「天」の遣いだからね。
ソンの言葉が耳の奥に蘇った。
「……じゃあ、カリーニンは」
ヴァークは思わず腰を浮かし、扉を振り返る。
そ知らぬ顔で閉ざされた扉は、ほんのりと温かみを帯びていた。その扉に向かってヴァークが小さく呟いた声を、風が掻き消す。
あんたは何なんだ、と。
十五章 終
- 407/862 -
[*前] | [次#]
[しおりを挟む]
[表紙へ]
0.お品書きへ
9.サイトトップへ