第二章 予言



──言えなかったな。

 一つだけライに言えなかった。

 言えば自分の嫌なところを見られてしまうようで怖かった。

──置いていかれる。

 どんどんライに離されて行く。あの足の速さのように、この足の遅さのように。

 ライにはあって自分にはない。

──羨ましいな。

 暗い部分を図らずも直視し、ライと離れるという寂しさに押し潰されそうになりながら、アスはやっと眠りについた。



 翌日、王城の使者に二日後迎えにくるとの伝達を受け、二人は第二の目的であるお使いをして帰路についた。

 街道を昨日よりはゆっくりと駆けて街へ着いた二人を迎えたのは、今までにない街の熱気だった。

 昨日のことにも関わらず、街中、予言書の話で賑わい、教会に帰る道すがら、行く先々でライは声をかけられていた。それでさえ面食らっていた二人が教会に帰れば、今度はあのシスターが目に涙をうっすら浮かべている。勘弁してほしいと天を仰ぎたくなった。

 しかし、始めは状況の変化に戸惑っていたライも、徐々に支度が済むにつれ腹をくくったのか、出発の日は堂々と──アスも晴れ晴れとした気持で、王城からの一団と共に去ってゆくライを見送った。

 それぞれ、違う道を歩むのだと思いながら。



二章 終

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