第八章 追跡者



 それにしても、と考えを巡らす。以前に王城で見かけた時の彼は、こんな男だっただろうか。もっと人として面白みがあったように思うのだが。

──それもこれも、神子様か。

 口許に笑みを浮かべる。神子という得体の知れない人物を中心に、国が二つ──その内一つはあの大国までもが動き出している。出国間際に聞いた話では、南のグラミリオンまで情報を掴もうと躍起になっているそうではないか。

 何もせず、ただ逃げる人間に一体何を期待しているのか。それだけの魅力があるというのなら是非お目にかかってみたいものだ。

 ライから視線を外して小さく息を吐くと、不意に扉を叩く音がした。思いのほか大きい音に二人は肩をびくりとさせ、ライは体をそちらに向ける。

 整列する三人の緊張などお構いなしに扉は素早く開かれ、初老の男が長い黒髪を持つ男を連れて入室した。

 リファムの王は若い。

 エルダンテで耳にたこが出来るほど聞いた言葉が蘇る。

「お待たせして申し訳ありません。王をお連れしました」

 初老の男が深深と礼をする後ろで、その男はにこりと笑ってみせる。華やかにも見え、だが、その一方で獣に牙を向けられるような威圧感も垣間見えた。下がれ、と初老の男を下がらせ、男はゆったりとした服をゆらめかせながら三人の前に歩み寄る。

 その相貌、力に満ちた眼、そして何よりも王としての気迫が段々と三人を圧迫していった。軽口をたたいていたジャックでさえ生唾を飲み込む。それほど背丈は変わらないはずなのに、どこか見下ろされているような気がしてならない。

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