彼は両目から血を流しながら、ゆっくりと人の気配のする方へ顔を向けた。霞がかった視界に映るのは、曇天の下に積み上げられた死体の山と廃墟と化した街に蠢く亡者の群れ、そして全ての中心、すなわち彼の隣に立っている白髪の美丈夫。
『一般人へのマ法による傷害殺人、およびシ人の製造、加えて俺の××に俺より先に傷をつけた罪により、』
視界は狭く、男の声だけが世界に響く。白髪の男は鎖付きの黒い眼帯を指でなぞり、ゆっくりと紫煙を吐き出した。

『――死刑を、執行する』

 ――轟。

心臓の辺りで何かが廻る気配がした。彼が胸を抑えた刹那、男と彼の辺り一体は立ちのぼる青白い炎と嬲るような灼熱に包まれ――

『……やっと、見つけた』

自分の腕を乱暴に掴む男の、透き通るように蒼い瞳。灰色の世界の中にそれを認めたのを最後に、彼の視界は暗転した。




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