私と隊長の愛のメモリーは話せばそれなりに長くなるのでさくっと説明しよう。


十代のころなんやかんやで王族という身分を隠しアドル=スペンサーという名前で軍に入った私はさまざまな手違いで辺境警備隊に配属されてしまい入隊早々この輝かんばかりの美貌の為に暇と性欲を持て余したガチムチマッチョたちに囲まれ危うく貞操の危機であったところをちょうどその時異国からこの国にやってきていたサディス隊長(おっとその時はただの亡命者だった)に救われてしまったのだあのときの隊長は男前すぎて今思い出してもいろんな場所からよだれが出る。ちなみに、それなりに腕に自信はあったので、貞操の危機というのは私と隊長の出会いをよりドラマチックにするための脚しょ……いやなんでもない。


とにかく、この劇的な出会いによって得体のしれない異国人に一目ぼれしてしまった私は、彼から職を探しているという話を聞き……まあ色々と裏に手をまわして彼を辺境警備隊隊長の地位に据えた。職権乱用だのなんだの言われそうなところだが、この国はまず隣国から攻められることはないため辺境警備隊は非常に平和でテキトーな部隊であったし、また彼にはその肩書きに恥じないだけの実力があったため、私の操作を糾弾するものは昔も今も特にいないという言い訳をしておく。……うん申し訳ない、私だってあのころは若かった、許して。


まあなんやかんやで彼は私の上司となり、私は彼の部下として真面目に働いたりマントをこっそり被ったり働いたり彼の下着をこっそり被ったりたまに風呂に誘って彼の褐色の肢体を舐めるように観察したりという蜜月を過ごしていたわけだ。隊長が風呂に入ったときにこっそり下着を盗んだこともある。下着がないことに気づいて眉間にしわを寄せる隊長のいらついた表情にゾクゾクした。数日後に犯人(私)が発見され、隊長にゴミを見るような目で見下された。ちょっと気持ちよかった。


数年後、父から隠居したいからそろそろ戻ってきて王位を継げというお達しが来たときは、……冥府に送ってやろうか、とか。思ってない、断じて思ってないよ。本当のことを話すわけにもいかないので、適当な理由を考えて隊長に辞表を出したときは腹の底から泣いた。泣きながら、隊長のパンツ下さいと訴えたら過去最高の力で殴られた。しかし隊長から殴られ慣れていた私はすぐさま復活し、目にもとまらぬ速さで隊長の服を剥ぎ、下着を奪い取って逃走した。青だった。

そして城に帰ってから父とやりあった後、アドルファスV世として即位した私は、王として政務に追われる傍ら、一介の恋する男としてこっそり彼のいる国境に行き無記名で新しい鎧などの贈り物をしたりパンツを盗んでばれないように新しいものを置いて行ったり。遠距離ながらもそれなりに楽しい日々を送っていたのだ。


彼の利き腕が病で壊死し、職を失うことになるまでは。




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