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「ふぁーぁ…あー……眠っ。いー天気だし…誰も来ねぇし、寝よ。」 学校の屋上で硬い床に寝転んで空を見上げている少年が一人いた。雲一つない清々しい天気であり、昼寝にはもってこいの天気であった。そしてウトウトと少年は一時間目の授業からさぼり、睡眠を摂った。 ――――― ―― しかし、この少年は全身に駆け巡った激痛で覚醒した。 「痛っ!?」 少年は半分寝ぼけてはっきりと判断のできない頭を覚醒させて状況の把握に努めようとする。 ここは校舎の中、どこかの教室。そして周りには男子生徒が数人。見たことのない学ランを着た学生たちに囲まれている。 「…ここ何処だ?俺…屋上で寝てたはずなんだけど?」 「おい、こいつ気絶したと思っとったら、―チガいになったで!」 「ホンマ、ウケるわぁ。」 「まさか自分の都合のいいとこだけ忘れとるとかあらへんよなぁあ!」 少年を囲んでいる男子生徒の一人が掃除道具の箒で攻撃をしてくる。少年は持ち前の反射神経を用いて男子生徒からの攻撃を軽々と避ける。しかし動いた瞬間に痛みが増した。 「っぶねぇな!いってぇええ!?」 「忍足のくせに避けるなんぞ生意気やぞ!」 「は?オシタリ?俺そんな名前じゃねーし。俺の名前は守本友哉だ。」 「今謙也がボケても誰も笑わへんで。誰や守本友哉って。自分の妄想のオトモダか?」 友哉の発言を嘲笑しながらまた一人、新たに男子生徒が増えた。その男子生徒は左腕に包帯を巻いていた。 「は?ケンヤ?……誰だ?テメェ。」 「なんや、ホンマ忘れとるん?テニス部部長の名前も忘れたんか?可哀想な脳みそやなぁ。俺だったら死にたくなるわ。」 「…初対面の奴にそんなこと言われる義理はねぇんだけど。」 「チッ…ホンマ腹が立つ奴やな。なんやいきなり標準語になりよって気持ち悪いわ。まぁ、ええ…俺もお前のことなんて忘れたいと思うとったとこやし。けどなぁ、マネージャー殴ったこと忘れとったら…許さへんで。」 「は?マネージャー?……知らねぇよ。最近ボコッたのはどっかの高校生だぜ?」 友哉は記憶の糸を辿ってみたが、思い出されるのは男を殴った記憶だけだった。女なんて殴ってない。そもそも女を殴ったのは一年程度前に殴ったのが最後だ。 「そーか、そーか、期待はしてへんかったけどお前がそこまで最低な奴やとは思わんかった、わぁ!」 白石は拳を振り上げ、友哉の鳩尾を狙って振り落とした。その拳は囲っていた男子生徒よりも比べ物にならない位早く、避けることが出来なかった。 「っグ!?」 「自分らもうこんなやつ……殺してもええわ。」 白石はそれだけを言い残し教室を去って行った。 「白石…本当に怒っとったな。」 「くわばら、くわばら。あいつだけは敵に回したくないわ。」 「この学校を牛耳っとるんやで、逆らうなんて奴はお前位なもんや、忍足。」 「は?学校っつーかこの辺りしめてんのはこの俺だろ?そもそも白石なんて奴俺の学校に居ねぇだろ。いや、居たか?生徒数多すぎて把握できてねぇんだよ。」 友哉を囲んでいる男子生徒は友哉の発言を聞いてキョトンとした顔になった。友哉もその反応に対してキョトンとなった。そして次第に男子生徒達から笑いの渦が巻き起こる。 「ハ…ハハハハハ!」 「ちょ、マジでお前頭の打ちどころ悪かったんやないの?」 「やっべー、今日一番笑ったわ。」 「お前みたいなヘタレが学校占めれるわけないやろ!」 「んだよウゼェな。」 訳も分からず笑われて黙っている友哉ではない。 「はぁ…めっちゃ笑かしてくれたお礼にプレゼントしたるわ。」 男子生徒が再び箒を友哉めがけて振り下ろしてくる。 「え、何?喧嘩?買ってやろうじゃん。俺にケンカ売ったこと後悔すんじゃねーぞ、コルァ!」 友哉は目にもとまらぬ速さで一人ずつ確実に殴りぬき、何人も居た教室の中で意識のあるものはただ一人、友哉だけになった。 「ッけ…口ほどにもねぇ。しっかし、さっきから痛ぇな。攻撃は全部避けたのに…。」 体のあちこちに鈍い痛みが走る。こんな打撲した時のような痛みがする攻撃を受けた覚えはないので友哉は疑問に思う。 「つーか、俺学ランなんか着てたか?ってグロ!?」 一番痛む腹を捲ってみると色とりどりの痣が皮膚を覆っていた。 「ちょっと待って、か鏡どこ!?」 |
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