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「――――謙、友哉さ…謙也さん?」 自分達を呼ぶ声が聞こえる。友哉はまだ寝ていたいと訴える体に鞭を打ち意識を覚醒させる。 「――ぅ…財前……か?」 目をこすりながら姿を確認する。友哉という名前で謙也を起こす人は一人しかいない。 「はい、財前す。」 「(戻れはしない…か。)何だよ。お前何の用事があってここに居んの?つかお前授業さぼったな。」 「それは謙也さんもっすわ。」 「……お前…って、ぇえ!?」 目を擦るのを止め財前の顔を見ると、耳にはピアスが複数存在していた。まさか一度にそんなに多くのピアスを開けてくるとは思わなかった友哉は驚きを隠せなかった。 「おいおいおいおいおいおいおい、お前思い切ったことするなぁ…。」 「俺はそれくらい本気なんすわ。」 確かに力強い意思を感じる。相当財前は本気のようだ。 友哉は舎弟なんて要らないと考えていたが、この体で舎弟にしてしまえば自分のではなく、謙也の射程になるのではないかと考え、舎弟にしてやった。 「アハッアハハハハハハ!面白い!気に入った。舎弟にしてやんよ。謙也ぁ、いいよな!」 (…………………………。) 「んだよ、返事しろよぉ…いい加減にしろ馬鹿謙也ぁ…。」 「……教えてください。あなたが誰なのか、なんで謙也と自分の名前を呼ぶんです?友哉って名前は?」 「お前、突っ走る奴だな。そんなバカは嫌いじゃねぇ!いいだろう、教えてやるよ。信じるか、信じないかはあなた次第です。」 長話になるからと立っていた財前に座るよう促す。 そしてどこかで聞いたことのある台詞を吐き友哉は、 自分は誰なのか、 自分はなんで謙也に憑依しているのか、 何で謙也の中に自分が居るのか、 謙也がテニス部にどんな思いを抱いていたか、 そして今、謙也の気配が全くしないこと、 思いつく限りの情報を教えてやった。すべての話は突拍子の無いものばかりだったが、納得せざる負えないものばかりだった。すべての話を聞いた財前は青ざめた。 「そう……な、こと……じゃぁ、謙也さんの今の待遇はっ。」 「無実の人が死刑執行されたようなもんだな。」 「っっ俺、らっ。」 「後悔するだろ?確かお前は謙也に何もしていないと言ったな。そんなお前でも事実を聞かされてここまで動揺してるんだ。白石や一氏や千歳ってやつはどれだけ後悔するんだろうな。」 友哉は不敵に笑う。 「俺、部長にっ。」 財前は腰を上げた。一刻も早く真実を伝えようと。しかし友哉はそれを止める。 「冗談、教えるのは待ってくれねぇ?こっちもこっちで動いてんだ。」 「友哉さん…はいったい何を…。」 「復讐してやるんだよ。」 財前の顔が強張る。 「…え。」 「あー違う違う、間違えた。復讐つーのは俺が本当はしたいこと。謙也は…お前らの誤解を解いてまた一緒にテニスがしたいんだとよ。」 「謙也さん…。」 「つっても、今謙也は全く反応しねぇし?復讐してもいいんじゃね?って思ってるけどな。お前らがのた打ち回る姿を見るのも楽しい…よなぁ?散々謙也を痛めつけちゃってー。ほんと不良の俺でもビックリー。」 「っ!?」 友哉はチラっと財前を見る。財前も睨まれたわけでもないのに体が震えてしまう。 「でもそんなことはしねぇよ。もしかしたら謙也も時間がたったら反応してくるかもしれねぇし?そんとき俺がお前らをボコボコにしてたら俺が謙也に怒られるし。」 「……友哉さんは何で、そんなに謙也さんの言うことを聞くんですか。まだ謙也さんの体に入って3日目なんすよね?」 「あー…やっぱ聞いちゃう?そこ。」 友哉は言葉を濁す。 「はい。」 「まぁいい、謙也も聞いてないだろうし自ら舎弟になりたいって言ってきた財前クンの心意気に免じて話してやろう。俺の…守本友哉の後悔を、」 |
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