俺と僕とそれから | ナノ


08


友哉が目を覚ますと太陽がかなり傾いていた。友哉の周りには誰も居らず、部員は帰る準備にとりかかっており、コートの片付け、ボール拾いなど平部員が動いていた。そんな中、今まで動いていなかった友哉が起き上がったというのに、誰も見向きをしなかった。用無しだと言いたげだ。

「んっ…ててて、あー……疲れた。」

(大丈夫なん?平気?)

(痛いっちゃー痛いけど、平気だ。ヘタレなお前に耐えれて俺に耐えれないはずがねぇ。つか、拘束とけてらぁ。)

(小石川が少し前に外して行きよった。)

(小石川ー?)

(せや、俺に味方してる訳でも危害を加えてる訳でもない財前みたいなやつや。)

「ふーん、そっか。謙也、本当にまたこんなやつらと仲良くしたいのか?」

(……え?)

「こんな、お前を躊躇なく攻撃してくる奴らを許して、また仲良くテニスしたいのか?俺だったら嫌だ。」

(…俺やってもし仲間が俺と同じようなことになっとったら俺はそいつを周りの奴らと同じようにすると思う。俺だってアイツ等みたいに、殴って、無視して、ボールをぶつけてると思う。そういうもんやろ。やから俺は誤解を解いてまたあいつらと仲良くしたいんや…仲間やし。あっちもまだ俺を仲間やと思っとってくれとるはずや。こんなのずっと続くわけないやん!)

「…そっか、よし!だったら早く打開しないとな!俺も元に戻りてぇし、とりあえず今日は帰ろう!」

(おん!)

友哉は起き上がって、服について土を念入りに払ってから部室へ歩いて行った。歩く度に体のあちこちが痛むけれど、心なしか足取りが軽かった。謙也が希望に満ち溢れているからかもしれない。
部室に辿り付き、友哉はドアを開けた。するとそこにはまだレギュラー部員が制服に着替えていた。まるで、これからみんなでミーティングをしますよ。という雰囲気だった。しかし、そんなものはこの時間から開かれるわけがなかった。これから開かれるのは、みんなで行うヒトゴロシであった。
禍々しい雰囲気に友哉は扉を開けた状態で、太陽を背にして部室に一歩入った。すると白石が友哉に話しかけてきた。

「遅かったやん。」

「…さっきまで意識が飛んでたからな。ほらお前らそこどけろよ。荷物がとれねーじゃねーか。帰らせろよ。謙也ん家には門限あること知ってんだろう。」

「お前はいつから俺たちに指図できるようになったん、や!」

一氏が殴りかかってきた。なんて遅い拳なんだろう。この程度のものなら拳を逸らした上で、数発殴ることなど容易いものだった。しかし友哉は散々謙也に殴らないようにと言われていたから反撃はせずに拳を逸らすだけに留めた。それにより、殴り損ねバランスを崩した一氏は狭い部室の中で大きな音を立て無様にこける。何かで頭を打ったようだが、そんなこと知らない。謙也はもっと辛いことを受けているのだから。

「お前、避けるんやないで!」

「あ?避けないとイテェだろが、俺Mじゃねーから簡単にボコられる趣味ないし。」

「大人しく殴られとけや!今まで通りになぁ!」

「マジ勘弁だぜ。俺、殴られたら絶対に反撃する人だから。むしろ殴りかかってくるだけでも反撃してぇんだからな。俺、めっちゃ我慢してる。俺、マジ偉い。俺こんなストレスを抱かずにぶん殴ったほうが気持ちいいんだが、仲間らしいお前らを殴ったら悲しむ奴が居るんでね。殴らないって決めてんだ。盛大に感謝しろ。」

(友哉…ありがと。)

「(いいって約束は守るぜ。)…え?」

友哉がほんの少し意識を謙也に向けていたが、直ぐに部室の方へと意識を持って行かれた。なぜならば部室が笑いの海に飲み込まれてしまったから。どうしてこんな反応をされなければならないのだろうか。友哉は分からず、驚くだけだった。

「アハハハハハハッなんや!?仲間?俺とお前がか?そんな天地がひっくり返っても起きる様なこと言わんといてくれる?」

状況が飲み込めないでいると白石が両手を大げさに叩きながら罵り言葉を発した。

「何、を。」

(っ!?)

「謙也ぁ、お前めっちゃキモイで?」

(白…石?)

<< TOP >> 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -