青春Wonder | ナノ


忍足がヘタレで初心になりまして


「遅れて申し訳なかった!例によって例の如く先生に捕まっちゃってさー。」

撫子が部活に顔を出すことが出来たのは部活が始まって30分後である。跡部の居るコートに向かって謝罪の文を発した。

「アーン?それは監督から話は聞いてる。さっさと着替えて仕事しやがれ。」

「あらほらさっさ!」

対して怒られるわけでもなく撫子はそそくさと部室の方へ走っていった。それから部室に入って服をジャージに着替えようとしたらそこには忍足がソファーに座って居たわけであって、

「あ?なんで忍足居んの?アップしないといけないんじゃないの?」

「えッ!?あ、や…その……!」

居たからと言って怯む撫子ではない。むしろ、制服の下にはすでにTシャツと短パンを履いていたから脱ぐだけであって別に恥ずかしい事ではない為、いつもの様に着替えながらの会話である。

「んだよー、要領得ないなぁ…。」

「な、んで俺が居るのに、きゃぁあああああああああ!!」

撫子の方を見て目を見開いたかと思ったら次は撫子の鼓膜が破れんばかりの大きな悲鳴を上げた。

「なんでぇえええええ!?ちょ、忍足ぃい!?アンタなんか悪いものでも食った!?」

思わず駆け寄って両肩に手を乗せて揺さぶる。それに連動するかの様に忍足の顔が徐々に真っ赤になっていった。

「オイ、椿崎、今忍足は……ってどういう状況だ?」

忍足の悲鳴に駆け付けた跡部。何かを言おうとしていたがこの状況。撫子が乱れた制服姿で忍足の両肩を持っていると言うカオスな状況に遭遇して思わず突っ込んでしまったようだ。

「跡部跡部跡部ー!忍足が死ぬかもしれない!」

「…テメェが距離をとったら元通りになるからとりあえず離れろ。話はそれからだ。」

忍足に対して何もかもを知っているようだった跡部は撫子にそう指示を出した。撫子は跡部の言葉に従うのは癪だなぁとか思いながらも従うしかなく、忍足から距離をとった。

「なんだよー、忍足の事は何でも知ってます宣言か?CPるぞ。」

「日本語を喋れ。」

「れっきとした日本語ですけどなにか?と言うかさっさとこの忍足の謎を教えろ。」

「……チッ、…滝、ちょっと来い。」

「あぁ、やっぱりか…。」

教えろと言った途端に跡部は滝を呼びつけた。どうやらこの忍足の原因には滝が一枚噛んでいるようだ。

「…俺様は滝だけを呼んだんだが?」

「Aー、だって面白そうじゃん!俺も混ぜて欲しいCー!」
「俺だってダブルスペアの危機だぜ!?顔突っ込むぜ!」

滝以外にもジローと岳人が面白そうだからとやってきた。

「まぁいい…滝、椿崎に経緯を話しやがれ。」

「えっとねー、早い話僕が撫子に飲まそうと思ってたドリンクを間違えて忍足が飲んじゃった話ー。」

「ほうほうほう…ってちょっと待て、私に飲ます気だったのか!?」

「だって試作品を部員に飲ますなんて今後の試合展開がおかしくなっちゃうでしょ?」

「今私が実験体ですみたいなことを言ったよね!?」

「今更?」

「なッ!?く…忍足……ある意味GJ!私を救ってくれて!」

「あ、はい…いえ…。」

「…………滝さん、これはどういう作用があるのですかね?」

「純粋ウブな子になるって作用なんだけどー…男に使ったら鬱陶しいだけだね。じゃぁ、僕幸村君達に実験結果の報告してくるからその忍足で適当に遊んどけばー?」

と滝は言い残して部室から出て行った。撫子は純粋ウブ…と思いながら忍足をジロジロと観察。ジローと岳人も同じようにジロジロ観察しながら忍足にちょっかいを出している。
その様子だけを見ればショタを侍られているいつもの忍足にしか見えないのだが…。しかし忍足が不意に撫子の目を見てしまい目があったときは不自然に目を逸らして顔を紅潮させた。

「あの…撫子?…できれば俺んこと見んでほしいんやけど…!」

話しかけるのもいっぱいいっぱいな忍足。そんな忍足を見て撫子は簡単にはいそうですかと言って下がるわけもなく、むしろ忍足に一歩一歩近づいていく感じだ。

「………。」

「ちょ、待っ!」

それから両手で顔を固定して無理やり目と目をあわせる。触られた瞬間の忍足はもう、真っ赤を通り越してなんなんだろうと言う感じである。そしてテンパる。

「……クッ!私の知ってる忍足がこんなに可愛いわけがない!こんなに萌え袖の似合う忍足なんて認めたくないッ!」

撫子は思わず叫んだ。だって、忍足は本来イケメンなのだ。設定上、残念なイケメンになってしまっている訳であって、その残念が抜けたらただのイケメンである。イケメンでありながらウブって…なんて俺得なんだ状態である。

「離しッ、お願いやからぁ…!」

涙目になりながら訴える忍足。

「グハッ!?言葉にできない萌えがある!」

「なーなー、撫子ー、もう侑士これでよくね?残念要素がなくなってペアとしても誇らしいぜ!」

「ホントだCー!こっちの方が弱み握りやすいって感じー?」

「ジローが少し黒いぞ?だけど、岳人のその発言は激しく同意。ね、忍足君素敵だよ!今の方が絶対モテる!」

「そんなん、モテ…モテたって嬉しゅうないわぁ…恥ずかしいやん!」

「うわぁ…ッ!本来の忍足ならば絶対口にしないセリフだ!って言うかネタをありがとう、そしてありがとう!初心過ぎて女子と関われない受け…いや、攻め?……やっぱ受けだな。」

「テメェら何時まで忍足で遊んでやがる。今は部活中だぞ!さっさと戻れ!椿崎は仕事しろ!」

「「「ハーイ。」」」

「じゃ、忍足また後で!跡部、テメェもう少し遊ばせやがれ。こんな美味しい事滅多に無いんだから!やっぱCPって欲しいのか!」

「だから日本語を喋りやがれ。」

四人は忍足を部室の中へ残して放課後の練習に励むことにした。ちなみに何故忍足は部室待機なのかと言うと、ファンクラブの女子たちの視線だけで硬直し、使い物にならないらしいから。
それから練習が終わって片付けて、撫子はウブな忍足を観賞しようと勢いよく部室の中に入っていった。

「おすぃったりー!」

「おぉ、なんや?いつもより元気ええな、なんか萌えた出来事でもあったんか?」

「…は?」

ウブな忍足が待っているかと思ったのにそこに居るのはいつも通りな忍足であった。普通に撫子に話しかけてきやがった。

「あぁ、撫子。そんなドリンクであんなのになったんだから戻るに決まってるでしょ?」

滝が一言解説。とても分かりやすいです。ありがとうございました。

「えー…。」
「ホント落胆だCー…。」
「クソクソ侑士め、もうちょっと飲んどけよ…。」

ウブ忍足が良いと騒いでいたメンツが分りやすく落ち込んでいる。

「何やねん!なんやねん、ホンマ!俺がなんかしたんか!?そんな残念なモノを見る様な目で俺を見んといてや!」

「…あ、ロリがいる。」

「え!?何処なん、何処に居るんや!」

「「「……ハァ…。」」」





―――――――――
500000hit企画第36弾
如月師走様「青春シリーズ/滝魔法(笑)(魔法でも薬でもなんでもおk)で忍足がヘタレでウブ(女の子(夢主含む)にちょっと触れただけで真っ赤になるレベル)でウザさが抜けた可愛い侑士との絡み」でした。

あまり絡んでないとか言ってはダメです。初心な忍足を書くの難しかったです…なんでだろう…?関西弁を喋らせたら…と言いますか、標準語を喋らそうとしていた…なんで?
謙也でウブは簡単なのに…なんでだろう。

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