青春Genocide | ナノ


「……忍足…ちーとツッコミ呼んで来てくれん?流石にツッコむ勇気うちにゃー無いけんな。」


「ハァアア!もう好き!!好き好き大好き!愛してるぅ!!椿崎撫子は貴方を愛しています。地球上の誰よりも!」

撫子が熱烈に告白しているのは本来撫子の萌えの範囲に入らない様なただのイケメンな容姿であり、そして完璧な性格、高飛車でもなく、傲慢でもなく、紳士であり、万人受けする感じの少年だ。
本当なら撫子はそんな人を見たら観察を徹底的にしてBLフラグの回収に走り回るはずなのだが、なんという事だ。今回は自ら接し、本気で恋をしているもよう。少年を好いているのは撫子だけではなく氷帝女子全員と言っても過言ではない。跡部様跡部様言っていた女子もこの少年を好いている様だ。ハーレム状態である。

「あぁ、撫子…俺もレディ同様愛してるぜ。」

「嬉しい!」

「あー!お姉様ズルいですわぁ!!」
「でもお姉様とのカップルなら許しちゃうぅ!」
「お二人とも高嶺の花って感じですものね!!」

本来ならば、こんなことあるはずがない。あってはならない現象だろう。
ここで言おう、彼は他の世界から来た逆ハー少女ならぬハーレム少年であると。なんて珍しい。こんな世界に来るよりも他の世界に行った方が可愛い女子はいっぱいいるはずなのだが、

そんな些細な問題はどうでもいいのだ。問題はテニス部。
部活が始まる前、テニス部レギュラーは着替えながら愚痴を言う。具体的には忍足が、

「跡部ー、撫子が怖いから早よ戻してやぁ。自分もあの男子みたいにフェロモン振り撒いて対抗しようや。」

「冗談!別にいいじゃねーか。マネの仕事はちゃんとしてんだからそれ以上は俺様は別に望まねぇ。」

「そうだぜ侑士。撫子があの男子好きなら俺達には何の影響もねーじゃねーか。」

「いや、あの撫子はおかしい言うんか、なんていえばええんか…なんや、操られとる感じで…気持ち悪いんや…。」

「アーン?それはお前の見た方じゃねーのか?」


「失礼しまーす。」

部員で話し合っていたらそこにいつもの様に撫子が突撃してきた。まぁ、マネの仕事をしに来たわけなのだけれど。

「撫子!」

「な、なにさ!?」

「なんであんな男に本気で惚れよん!?自分の萌えはショタと違うんか!?」

「忍足…あの方の悪口は許さないよ。つーか、半裸を私に見せるな。あの方以外の筋肉なんて見たら目が腐る。」

「なッ!?」

撫子は辛辣な言葉を忍足に浴びせ、それから部室を去って行った。

「……確かに…あの椿崎は気持ちワリィな。」

「俺の感じとる気持ち悪さとはまた違うようやけどな。」


「皆さん少しいいかしら?」

今度は別の初めて見る様な女子が部室を尋ねに来た。その女は何処か誇らしげだ。

「誰だ。」

「名乗るほどでもないただの傍観者よ。私はずっと見てたわ、このテニス部の事。そして今、あの女の本性が現れたのよ。」

「あの女って撫子のことか?」

「そうよ。あの女に騙されてたのよこの部活は、あんな男にだらしない女。男だったら誰でもいいのよ。だからすぐにあの男に靡いた。」

「…やから?」

「あの女はサイテーな女なのよ。見たらわかるでしょ。きっとマネの仕事も後輩をパシリにしてたんじゃないのかしら?あの癌を追い出すなら今の内よ。」

この女は撫子を部活の癌だと言う。撫子の仕事はきっと後輩に押し付けているのだと言う。そして撫子は男にだらしないと言う。
冗談にもほどがある。

「アーン?誰がテメェなんてメス猫の話を鵜呑みにすると思ってんだ。あること無い事言いやがって、嘘をつくならもう少しまともなことを言うんだな。」

「せやせや、撫子が男にだらしないとかあり得んわ(二次元はだらしないどころちゃうけど。嫁何人居る言うとったかな…)。」

「な、ッ…まだ逆ハー補正は切れてないのね……。」

「なんや嬢ちゃん、何か言ったか?」

「いえ別に?せいぜい後悔することね。私の忠告を無視して……こんなはずじゃ、なんて思っても遅いんだから!」

女子は脅迫めいた事を言い放って部室から出て行った。

「……あの女、俺知ってるCー。」

「なんや、ジローが知っとるとか珍しいな。」

「うん、だって本当にテニス部の方をGって見てんの。それから撫子が視界に入ったら睨みつけてその後ニヤァって笑ってんの。気持ち悪E。」

「ですけど、あの女興味深いことを言いましたね。逆ハー補正だとか…その単語、椿崎さんの口からしか聞いたこと無いですよ。と言いますか椿崎さんが頻繁に口走っているような気がします。」

「あぁ、確かにな…もしかしたら……。」

「もしかしたら、なんですか?」

「ちょう待ち、心当たりあるから電話させて。」

忍足がケータイを取り出しどこかに電話を掛ける。そうしてすぐに繋がったようで会話が始まった。どうやら相手は謙也のようだ。しかしながら「さっさと白石に代われ」と言っているので目的は白石らしい。
跡部は忍足に受信音を最大にしろと指示して、音量を最大に。

『なんや、謙也の従兄君。俺になんや用があるんか?』

「いきなりすまんなぁ。撫子の様子がおかしいんや。」

『撫子さんの?…どういう事やkwsk。』

「いやな、今氷帝がこんな事になってん――――。」

忍足が今の状況を詳しく白石に伝えた。跡部よりもモテモテの男子が居る事や、いきなり傍観少女だと名乗る女も接触して来て、それから逆ハー補正と呟いたこと。出来る限り伝えてみた。
それを聞いて白石は大きくため息をついて、それから言った。

『なんやそれ、おもろいやん。ワロスワロスって感じやわ。いやー、まさかそんなことが実際に起こるとか三次元も捨てたもんやないなぁ。』

「…どういうこっちゃ。」

『つまりや。今氷帝で起こっとることは夢小説に出てくるような話なんや。』

「夢小説か?」

『せや、早い話そのモテモテの男子は逆ハー少女改めハーレム少年。それから自称傍観者はなんちゃって傍観者。傍観者は最後までキャラに関わっちゃいけん言う話なのにな。で、その自称傍観者は逆ハー補正を受けとるんが撫子さん言う勘違いをしとるわけやな。大抵イケメンの部活のマネになりたがるからなぁ逆ハー少女は…。あと大抵傍観者が出てくる逆ハー少女は性格悪いんや。』

「撫子の性格は悪いけどな。」

『なんや?謙也の従兄君。俺の嫁の悪口言ったか?今。』

「言っとらへん、言っとらへん。で助けてほしいんやけど、そいつらを退治する方法とかないん?」

『んー…せやなぁ、あるっちゃぁあるけど…適応されるか分からんのんやけど……。』

「アーン?さっさと教えやがれ。」

『跡部クンの声聞こえたで!?まさか氷帝の皆聞いとったりする?部活前やし…。』

「おん。」

『いややー、撫子は俺の嫁発言してもーた。恥ずかしぃわぁ。』

「自分の発言なんて一々真に受ける奴らやないから、さっさと話しや。」

『なんや、お茶目やが。まぁ、それだけ切羽つまっとる言う事やな。ま、教えたろ。王道としては戸籍が無かったり、転校してくる前の学校が不明やったり、その矛盾点を突き付けたらそいつらは消えてしまうっちゅー感じなんやけど…。』

「そうなんか…とりあえず矛盾点を突き付ければええんやな。分かったわ。」

『まともな助言出来んですまんなぁ。』

「いや、大分助かったわ。二次創作しとらんと分からんことやったからな。」

『そう言ってくれるとれしいわ。あぁ、そうやその二人に伝えといてや。』

「何をや?」

『撫子さんを標的にしよって、…苦しんで去ねや。や。』

とても不吉な言葉を吐き捨てて白石は通話を切った。そして忍足はサー、と血の気が引いたような顔をした。

「大阪弁って…怖いんやな……。」

「侑士の大阪弁は胡散臭い感じだけどな。」

「…やけど、これで撃退方法は分かったわ。さっそく跡部、戸籍とかそいつらの個人情報調べ上げてや。」

「あぁ……だが、もし戸籍も矛盾点も無かったらどうするつもりだ?」

「あー…そん時は、俺も堪忍袋の緒が切れた感じでそいつらにブチ切れるわ。学校に来れんようにしたる。あいつらが来んかったらこんな狂った学校にはならんかったんやし。」

「その時は部活を退部してからにしろよ。」

「なんやつれへんなぁ。やけど、それぐらいお安い御用や。」

「侑士、そこまで出来るんだな。」

「まぁな、あんな撫子は見たないし。…ちゅーか、滝どこ居るんや?最近見んけど…。」

「さぁ?学校にも来てねぇし、知らねぇ。」

「滝が居ったら簡単なんなやけどな。」


まぁそんな感じで氷帝レギュラーによるハーレム少年と自称傍観少女の退治が始まった。

と、カッコよく豪語してみた。忍足なんて退部覚悟までしていたのだ。しかし調べてみたら結構簡単だった。二人とも白石が言っていたように戸籍もないし、以前の学校も分からない。それから親も親族もいないと言うのに銀行の口座には膨大な金額が振り込まれていた。

「なんやえらい簡単に矛盾点出てくるわ…もうちょい手こずるか思うとったけど…。
あぁ、せや。自分らに伝えてくれぇて白石から言付かっとんや耳の穴かっぽじってよう聞きや…『撫子さんを標的にしよって、…苦しんで去ねや』やて。」


それらを突き付けてやった次の日、
次の日からその二人は学校には来なかった。少女の方は来なくなっても嘆く人などいないと言う事は当たり前だ。とても影の薄い女子だったから。
しかし女子全員に崇拝されていた少年が消えたとなっては皆が騒ぐだろうと覚悟していたのだが、実際にはそんな騒ぎになることは無くむしろ「そんな少年居たっけ?」的な扱いになっていた。もちろん撫子もその少年の事は覚えていなかった。

「しっれいしまーす!ちょっとスコア表取りにおっじゃまー!!」

いつもの様に部活が始まる前撫子が突撃してきた。勿論、部員は御着替えなう。

「あぁ、撫子か…。」

「やっぽー!肉体美ぃい!!ゴリマッチョでもガリマッチョでもない奥ゆかしい筋肉萌え!!」

「…普通や。いや、女子としては違うけど…普通や……。」

「あ?なにさ。」

「いんや、こっちの話や。」

「やぁ、みんな久しぶり。」

撫子がハーレム男子に誑かされるといった事件の最中、学校にすら投稿してこなかった滝が全ての事件が収束した後の部活に優雅に登場した。

「「「滝!?」」」

「跡部、忍足、それから撫子、色んな意味でお疲れ様。」

「おぉ……なんで今まで居らんかったんや?大事な時に…。」

「あぁ、僕の方もちょっと用事でね。」

「どんな用事だったの?」

「ちょっと神様作ってた。」

「「…は?」」

「いやー、不愉快な奴二人がここに来ただけでも吐き気を覚えるのに変な特典付けやがって…だからちょっと入国を許した神様をペキョして新しく神様作りに勤しんできた。」

「……忍足…ちょっとツッコミ呼んできて、流石にツッコむ勇気私には無いよ。」

「無理や。」





―――――――――
500000hit企画第54弾
紅姫様リクエスト「青春主で逆ハー少女ならぬ逆ハー少年の補正にかかった撫子を戻す為キャラによる逆ハー&傍観撃退/傍観少女は、撫子が逆ハー少女と思っている設定」でした

逆ハー少年を勝手にハーレム少年にしてしまって申し訳ない。
ただ…主が補正にかかるならハーレム補正かな、と思いまして…。

しかし、結構話をはし折るのは難しかったですね。
これだけ内容が濃いと…。

まぁでも…楽しかったですね。この設定ww
主がどっか行きましたけど←

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