二人の少年が外に飛び出したとさ、 | ナノ


08


三日月が崇雷を抱えて、それから執務室へと運ぶ。そこは執務を行ったり、色々と一日をそこで過ごすことになる。その部屋は大変開放空間となっており、大広間がよく見える位置にある。昨日、男士達が集まった部屋の奥に位置してあるのだ。
つまり昨日一同が会した大広間が執務室からよく見えるというわけだ。逆を言えば大広間から執務室がよく見えるというだけの話だが。崇雷が重力に身を任せている姿がよく見えるということだ。せっかく浴衣に着替えたが威厳もくそも全く何もない。
ま、男士達が大広間に来なかったら問題ないよね。

「それはフラグだってばっちゃが言ってた。」

ぐーたらと重力に身を任せながら崇雷は呟いた。ほぼ予想通り崇雷が執務室へたどり着いたあとに少しずつ男士達が集まってきた。きっと自身の部屋は寝るときだけ。日中過ごす場所はは大広間と決めているらしい。律儀な生活を送っているようだ。
あんなに啖呵をきった崇雷と少し離れてはいるが同じ空間に居る事を耐えれるなんてなんて強いメンタルの持ち主達だ。それは崇雷にも言えることだが。
しかし崇雷の存在を無視するかのように男士達は男士達で談笑したりしている。なんともアウェイな空間だ。
そもそもなんでこんなにも公開処刑のような間取りをしているのだ。丸見えとかないない。前任者は一体何を考えて執務室をこんなところに間取りを作ったのか。小一時間ほど問い詰めたい。色々便利なのか?一体何が便利だというのだ。執務は基本政府への報告と、次回の出陣の進路、編成を一人で考えるようなものなのに。

「三日月。そろそろ考えよっか。」

「考えるも何も…答えは明白だろう。」

崇雷は自分がこんなにも動けなくなる理由は一体何なのだろうか、と考察を始めようと思った矢先三日月はそれを遮った。三日月にはその原因がはっきりしているらしい。

「その心は?」

「呪いの類ではないのは分かっているな。あの者らの神気がこちらに敵意を持って向かってこないだろう?恵も感じないだろう?」

「ああ、呪術の類は感じられないしな。何あいつら。呪うって言ったくせに呪ってこないとかツンデレなの?」

「だったら、ただ単に恵の供給できる霊力以上に彼らが主の霊力を持っていっているという話だ。」

「あ…そうだ。なんで基本中の基本のシステムを忘れていたんだ。やだ、私の霊力低すぎぃ。」

「…低いというわけではないと思うぞ。なにせ俺を幼い身で降ろしたんだ。それに仕方のない事だ。一気に数十もの神から霊力を取られたら本来なら衰弱してお陀仏になってもおかしくはないことだからな。」

本来のペースなら2年に一振り。養成所を卒業するころには六振り。正式な審神者になって自分のペースで男士を増やしていくところを崇雷は一振りから数十振りの維持をいきなりしなくてはならなくなったのだ。ならば仕方がない話だ。むしろ体が動かなくなるだけの反動で済んでいるのだからまだ儲けものだ。

「恵よ。この問題を先送りしていいわけではないぞ。早急に身のまわりの事は最低限出来る様になって貰わなければ。」

「三日月…やっぱり俺の世話…したくないんだ。俺、嫌われるような事…しちゃったかな。」

「違うぞ恵。主の世話は俺にとっての至高の行いだ。しかし…。」

「…しかし?」

「本気で腰をやる。」

「あ…っごめん。」

「歳は取りたくないものだな。」

「見た目若い分、油断するよな。」

しみじみと介護の大変さを感じる二人だったが、話が脱線し過ぎた。いったい何の話をしていたのか。ああ、そうだ。霊力をダダ漏れしてしまう事の対策をしなければならないのだった。

「さて、恵よ。対策を講じようぞ。」

ダダ漏れを防ぐなら霊力を制御するための装備を見につければいいだけの話だ。男士の数が少ない時は、ダダ漏れをしていても問題ない。吸い取られる霊力はそんなに多くないから。だからそういった制御は必要とはしないが、相当数を降ろしたとなったら、今の崇雷の様な事にならないよう制御するのは当たり前の事なのだ。しかし何分、男士の数に合わせて自身の霊力を絞らなければならない為、制御することが面倒な事になる。
制御するのが面倒だからと言う審神者も結構な数が居るため、霊力を外から制御する装備は一般に売られている。身に付けれる様にアクセサリーの形を模している。指輪だったりピアスだったりネックレスだったりブレスレットだったり簪だったり。その辺りは審神者センス次第だ。

「あ、やっぱり講じなくていいです。」

三日月が崇雷に似合う装備はどんなのが良いだろうかと、ウキウキしながら審神者専用のタブレットを操作していると男審神者はやっぱり講じないと言った。その言葉に三日月は絶望した顔を崇雷に向けた。

「恵っ…そんなにもこんな幼気な爺を虐げたいと言うのか…!」

「一言で矛盾を生み出してるんじゃねぇよ。違ぇよ。可愛い三日月を本当は苦しめたくない。が、俺の霊力でここに居るであろう負傷している神への治療、疲労回復へと向けたいだけだ。」

「…ほう?」

「三日月も知ってるだろう。って言うか身を持って知ってんだろう。俺は手入れの腕はからっきしすぎて笑えるが、…笑えないが、それで得たものもある。俺が手入れをしなくても俺の霊力にあたっていれば、手入れよりもかなりの時間がかかるが、負傷した傷も治っていくことを!」

本来なら手入れをしなければ男士達の傷は癒えることはないが、この崇雷の在学中の成績を思い出していただきたい。底辺を極めるド低能だ。しかし、そんな崇雷の霊力は少し特殊な毛色をしている。崇雷の霊力は癒す力を含んでいる。

「それは知っているが…。」

「だから、俺は俺の霊力の大安売りを開催して、きっと負傷してるから出てこないであろうここの三日月とかなんか貴重太刀達の治療に励もうと思う。」

「…それはいつまで?」

「……お前の軽症で数日かかってるから……想像がつかない日。」

「恵…。」

「そんな愁いを帯びた目で俺を見るな。泣きたくなる。けど、いつかは皆健康になったら霊力の大安売りを制御するし。それに夢現がきちんと効力を発揮するなら、近々手入れも神掛かりの腕になるって。気楽に行こうぜ!」

「恵のそのポジティブっぷりには感服するぞ。」

「褒めても俺のちゅーしかやらねぇぜ。して三日月よ。」

「ちゅーをくれたら反応してやるぞ?なんだ?恵よ。」

「朝ごはんを食べさせて。」

ここに来た目的は執務を行うわけではなく、朝ごはんを食べに来たのだ。崇雷は口を開け、上目遣いで三日月に甘える。

「あい分かった!恵は甘え上手だな。今日はどの十秒メシにする?えねるぎー?びたみん?それともオ・レ?」

「一番可愛い三日月を頼む。と言いたいが、朝ごはんなので健康的にビタミンを摂らせてくれ。」

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