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「口のきき方には気を付けろクソが。」 高尾は黒子の話中、顔にかかり滴るドリンクを舐めとっていた。それから黒子が言い分を言い終わり興奮覚めあらぬ表情を見てニコリと微笑み、黒子の頭をワシ掴んでテーブルに叩きつけて言った。先ほどまでの茶化す様な声色は無くただただ人を屈服させるようなオーラを放っていた。 「いッ……。」 流石にこの状況は目立つので高尾はすぐに黒子の頭から手を離した。 なんでもないっすー。気にしないで下さいー。と言うような台詞を言って周りの人達にこちらの関心を向けさせないようにした。ちょっとした高校生同士の喧嘩だ。殴り合いでもないし、気にすることは無い無い。 そして高尾は自分の荷物からタオルを取り出してドリンクを拭き始めた。 「それこそ言ってやろうか?天才様にも天才様の悩みってもんがあるんだよ。分かるだろ。顕著なのが青峰だ。才能があまりに余って周りの奴らは畏怖を抱き、試合にあたっただけで意気消沈。その時の奴らの言い訳は天才と当ったからしょうがない。だ。 天才って言葉で全てを片付けられる身にもなってみただろ?今。そんな扱いを一方的に受けたらスレるのも仕方ねーだろ。練習に出ないのだって化け物が一緒に練習できると思うか?凡人に合わせた練習を天才様はこなして満足か?天才様に合わせた練習に凡人はついて行けるのか?どちらも道理的じゃねーだろ。練習に出ないのだって差がついてしまうのは建前で、本音は自分を殺してくださいとでも言ってたんじゃねーの?あ、これは例え話な。好きなバスケでそんな態度をとられて、よくバスケを続けていられるのな。って俺は感心するね。嫌いになってもおかしくなかったよ。退部していてもおかしくなかったよ。昔のお前みたいにな。 それからもう一つ。楽しくなければ勝利じゃないっつーのもどーかなって俺は思うんだけど。トーナメントの試合では勝手なんぼ。勝てば官軍、負ければ賊軍。そうだろ?勝てなきゃ意味がない。その為なら何だってするのが本気ってもんだろ。楽しくなければ?だったら他の一年のベンチの奴らも入れてやれよ。じゃねーと皆が楽しめないだろ?皆が。まぁ?そんなことして他の学校に勝てるかは知らねーけどさ。ほら、やってみろよ。」 「…僕は、僕は、………。」 「図星突かれてアイタタタって感じ?まぁ、そうだよねー。自分のマイナス面を晒されたようなものだもんねー。でもこれが事実だから、ざーんねん。 さて、ここで朗報です。俺はお前の味方だっつったぜ?お前、火神を利用したように俺を利用して今の状況を打開してみたいと思わねぇ?」 「…え?」 「簡単な話、今お前を虐げてるやつらに復讐?みたいな。キレてもいいと思うぜ?俺は。お前は加害者でもあるが、被害者でもあるんだからな。 まぁ、俺は面白ければ何でもしてやるぜ?ただ面白くなけりゃ何もしねー。けど俺が関わって楽しくなるのは確実だぜ?俺ってハイスペック設定だからな。」 「…………………。」 突拍子も無く高尾は黒子に優しい言葉をかけていた。 いや、よく考えれば優しい言葉ではない。これは単に黒子を利用して楽しみたいと言っている。 しかし、言葉の端々に聞こえる「復讐」「被害者」「キレてもいい」そんな言葉だけを拾うとなんてメリットのある話。頷きたくなる。協力してくださいって。 高尾はそれが狙いだった。厳しい言葉をかけて感覚がマヒしているところでこのように優しいような言葉をかける。そうすればいつもの感覚よりも簡単に頷いてくれる。 まさに計画通りと言った代物だ。 「俺が協力してやるって言うのもレアだぜ?緑間のお守りもしながらなかなかな大変な作業をしてやるって言ってやってるんだ。話に乗るだろ?黒子ぉ。」 「…は、…。」 はい。そう言葉を紡ごうと口をパクパクさせている。 決断まであと少しである。 「ん?聞こえないよ?」 「は、い…僕、を助けて…ください。」 「よぉおおおおおおおおおおおおおおおっし!交渉成立!」 ウッハァ、とテンションの高い高尾。当たり前だ。玩具が増えたのだから。 それから高尾があ、と言ったように何かに気が付いた。 「ナイスタイミングじゃーん。さっき言ってた俺の友達も来たしー、作戦会議ってことでー。な!涼ちゃん!」 涼ちゃんと呼ばれた男は海常の制服を着ており、片耳にピアス。金髪。何よりも老若男女の目を惹く魅惑的な顔の持ち主。 黄瀬涼太がそこに居た。 「っスねー。お久しぶりっス。黒子っち。」 「そんなわけでよろしくでっす☆」 |
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