Prince of tennis | ナノ


常勝立海軍 01


「こちらA地区異常なし。」

ここは戦場、最前線A地区。廃坑しきったこの場所で戦う軍隊がある。

「ここを任されるとはな。俺もついにお払い箱か…。」

こんな意味のない場所に派遣されてしまったということは、この男にとっては期待もされていない。ただの捨て駒という意味を孕んでいたらしい。この軍で生き延びるにはこの男は優しすぎたのかもしれない。

「隊長そんな弱気にならないで下さい。隊長は俺が守って見せますって!」

「…期待しているぞ。マサ。生き延びたら呑みに連れて行ってやる。」

「はい!ありがとうございます!」

A地区で待機中の兵士達約20人と隊長。本部から離れたこの場所を守る意味などないと待機中の者らが思っていたが、それはただの考えでしかなくなった。何故なら目の前に一人の青年が現れたからだ。

「貴様!止まれ何者だ!」

マサと呼ばれる青年は隊長をかばう様に銃をかまえる。その他の兵士達も立ち上がり銃を青年に向かって構えた。いつでも攻撃できるように、安全装置を外して。
そして多くの拳銃を向けられた青年はその場に立ち止まった。

「私、今あなた方と敵対している立海軍の柳生比呂士と申します。」

「何!?しかし、柳生という奴は知らないな。」

体調が立海軍という名に反応したが、イマイチだ。何故なら立海軍の柳生なんて聞いたことがないからだ。

「知らないのも当然です。私は立海の汚点。平和主義者なんですから。そんな物騒なものしまって下さいよ。私は丸腰ですよ?」

柳生は両手を上げ敵意のないことを示す。示したところで無駄に終わる。敵対勢力に対して攻撃態勢を解除するということは、こちらも丸腰になるということ。そんな油断しか生まない行為をするはずがない。しかしそんな態勢を崩すことなく、話だけは聞いてやろうと体調が柳生という青年に声をかけた。

「……何の用だ。」

「この戦争、話し合いで解決しませんか?」

「は?」

「もちろん。あなた方の負けという結果で。」

「貴様バカにしてるのか!?…攻撃は、するな。」

いきなりなんていうことを言い出すのだろう。負けを無条件で受け入れろというのか。そんな馬鹿げた行為できるわけないだろう。今すぐ打たれても文句は言えないことを柳生は言ってのけた。この場に緊張が走る。こんな絵空事をかますのだから柳生にもなにか策があってのことなのだろう。下手に攻撃をしたら何が起こるかわからない。だから、もう少し、柳生の妄言に付き合うことに決めた。

「いいえ、私はいたって真面目ですよ?だって貴方たちはここで無駄に死ぬ事になるのですよ?私は紳士ですので無駄な死は見たくないですし。」

「貴様っ死んでしまえ!」

愚弄する言葉を羅列した。無駄死になんて誰がしようか。話を聞くだけ無駄だと判断した隊長は、攻撃開始と言わんばかりに手を振り上げた。

「やれやれ、交渉決裂ですね。ほら、仁王君もう行きますよ。」

「仲間がいたのか!?」

隊長の予想は当たっていたらしい。一人でノコノコとこんなところには来ていない。しかし仁王と呼ばれる人物の姿が見えない。柳生の一言でこちらに攻撃をしてきてもおかしくはないというのに。兵士達は柳生を中心に周りに仁王がいるのではないかと銃を泳がせる。

「何処だ出てこい!」

「おやおや、いいんですか?仁王君に気を取られていても、目の前から真田君が来ていますよ?」

真田弦一郎。立海軍の副将だ。立海軍随一の武力。そんな彼がこの小隊目掛けて突進してきているのだという。真田の武器は日本刀。接近戦を許してしまったらもう負けるしかない。逆を言えば遠距離中距離を保っている今、真田を仕留める必要があった。仁王と言う人物に気を取られるよりも目の前の恐怖を排除することが先決だと隊長は判断した。

「なっ!?全兵真田に標準をあわせろ!あいつをここに近づけるなぁ!」

「そんな攻撃効かぬわぁあああ!!」

真田は銃弾を避けながら、または唯一の武器日本刀で斬りながら、隊に近づく。

「いつ見ても真田君の風林火山は迫力がありますね。それでは仁王君、我々も済ませてしまいましょう。1、2、」

ぱんぱん。
柳生が両手あわせ音を鳴らす。そしてもう一つ。

「3、プリ。」

パン―――。


と言う音が、兵士達の後ろから聞こえた。柳生から発せられる軽い音ではなく、それの数倍の大きな音が鳴り響いた。この音は銃声に酷似していた。兵士達が驚き、振り返ってみると額に穴のあいた隊長と両手に銃を構えたマサが居た。

「仁王は俺ぜよ。」

「マ、マサさん!?」

「俺は仁王雅治。勿論、立海軍所属な。おっと、なんで俺に銃口が向いてるんじゃ?真田に向けときんしゃい。まぁ、殺られる前に殺ろうかの。はぁ、俺は実戦向きじゃないんじゃが。」

仁王はぶつぶつ言いながらも確実に兵士達に鉛玉をくれてやる。さらに真田も到着し、一瞬でA地区を守っていた兵士は全滅した。

「では真田君。お先に本陣へどうぞ。」

「うむ、では行ってくる。」

真田は言われたように、または当初の予定通り先に進んでいく。

「さて仁王君、もう殺り残しは居ませんか?私達の存在はシークレットなんですから。」

「ぅ…っぐぁ……。」

呻き声が足元から聞こえる。

「あ、まだ居ったわ。」

「き、貴様…ら何、者だ…。」

「餞別に教えて差し上げましょう。先ほど言いましたけど、立海軍所属の柳生比呂士と申します。僭越ながら一番槍を務めております。」

「同じく立海軍所属、仁王雅治。主に情報収集、または内部からの崩壊を起こさせる担当じゃ。」

「たすっ助け…てくれ。」

「「我の存在は極秘のもの。」」

「じゃそう言うことじゃけぇ。」

仁王は静かに銃を構える。柳生が別れの挨拶を言う。

「アデュー。」

パン――。

こうして20人で構成されていた小隊は壊滅。A地区に居る生きた人間は柳生と仁王、二人だけになってしまった。

「やーぎゅ。何が平和主義者じゃ。笑いそうになったじゃろうが。おまん一番槍やっとんのは一番に血の色が見えるからじゃろ。」

「…仁王君、合図もうしませんよ?リズム感というよりタイミングが掴めないんですから。誰です?正体をばらすタイミングを誤って、危ない目にあったのは。何度危ない目に遇いましたか?」

「あー、すまんかった。じゃ俺らも本陣につっこもうかの。」

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