Prince of tennis | ナノ


アイツの軍を倒したい! 01


「なー!しーらーいーしー、ワイも戦場行きたいぃい!なんで最近はワイらの軍負けへんのぉ!?」

あれから金太郎はちゃんと軍の訓練にも出席するようになったし、サボるようなことをすることは無くなった。四天宝寺軍の一員として相応しい態度にはなったのだが…。
ここ数か月、金太郎には出陣させてないし四天宝寺は負けていない。つまり金太郎はあの時味わった高揚感に飢えていた。飢えて飢えて、最近は戦場に行きたいと騒いでうるさい。

「何言っとん金ちゃん。負けとらんことはええことやんか。」

「でも負けんとワイ戦場に行かれへんやん!」

「金ちゃんは俺らが殺されてもええ言うんか?」

「ッ……それは、嫌やけど…。」

「やったら、大人しゅうしてな?ちゃんと金ちゃんには参加してもらうから、なんせ金ちゃんは四天宝寺軍の超ルーキーやからな!」

「……うー…やったら我慢する…。あ!これからちょぅ遊び行ってもええか!?コシマエに会いに行くんや!」

「コシマエ君か、よう聞く名前やな。おぉええで、それで金ちゃんの気ィが済むなら。」

確かコシマエ言うたら金ちゃんがよく遊んどる相手やな。コシマエってなんや言いにくいけど。金ちゃんは確かに胸にあった名札見た言いよったから、どっか外国の子供なんかな?

「じゃーいってきまぁす!」

「おー、行ってきぃ。」

金太郎は元気よく返事して、部屋から出て行った。一人、椅子に深く腰掛けて大きく呼吸をする白石。そして程なくして銀、小石川、財前、謙也、一緒に一氏と小春が入ってきた。

「お待たせ、蔵リン…みんな集まったで?」

神妙な顔をした小春が話しかける。

「…あぁ、じゃぁ始めようか、軍会議を……。」

上層部のメンツが揃って会議を始める。次の対戦相手は―――青春軍。

「なぁ、なんで青春軍を攻める必要があるんや?あそこは相手から吹っかけんかったら無害やろ?」

「謙也さん、本当に無知なんすね。あそこには世話になったんですよ。前回の戦った相手覚えとります?そこの唯一の同盟軍が青春軍だったんすわ。」

「………?なんで?」

いつにも増してクエスチョンマークを飛ばす謙也。

「やから謙也。前の会議で言うたやろ。同盟軍が敵にやられたんやで?やったら敵討ちみたいな感じで俺らを今にでも攻めてくる可能性やってあるんや。
やから、こっちが先制するんや。早いもん勝ちや、言うて。」

「ほー…ま、結局はいつも通りのことをしとけばええねんな。俺と光が一番槍とってな!」

「謙也さん、ホンッッマ救いようがないっすね。そんないつも通りに行くんやったらこんな会議二回も三回も開いとりませんよ。思い通りに行かんかんから、こうやって会議しとるんやないですか。」

「……なんや、俺場違いか?」

「やっと理解してくれました?やったらちょぅ黙っといてください。」

「…はいな。」

謙也はシュン、となってお口にチャック。

「…でや。小春、考えられるパターンを全部言ってくれるか?あそこは捕まってしもうたら情報の有無も問わず実験体にされるっちゅー話や。流石にユウジも派遣できん。」

「せやねー……あそこはホンマ情報が無いんやけど、在る一の情報を元に十の真実を曝け出してあげるぅ!―――IQ200のバケモン、舐めるんやないで?」

小春の周りの空気が凍る。カマキャラか男前キャラか、行ったり来たりの小春。どちらが本物か?って言ったらどちらも本物と答えるしかないだろう。
一つ言っておこう。小春は…他の軍から保護した元、実験体。

「小春カッコええ………。」

「ええか?大将、耳かっぽじってよう聞きや――――――――。」

テンポ早く話す小春。テンポは乱れずまるで機械。話す言葉の単語に感情は見られない。この時の小春は直視したくない。

「―――――ちゅうー訳で、安定要素の人らは前言った様に行動パターンははっきり分かる。乾っちゅー参謀の考えも固いから考える作戦も先読み出来る。ただ不安なんがあっちにも遠山金太郎幹部と同様に超ルーキーが居ることが最大の不安要素や。」

「…越前、リョーマ………。」

白石は手元の資料に載っている顔写真を見ながらその名を呟いた。

「せや。遠山幹部とそう、年齢は違わん。けど、遠山幹部よりも知力に長けていることは確か。教育係の不二周助が太鼓判を押して、さらに参謀の乾のお墨付き、オールラウンダーな厄介な奴や。」

「………こいつの詳しいことは?」

「…こっから情報無いんや。こっからは私の100%想像の話をすることになるけど、ええか?」

少し苦笑。

「…ええ、話してや。」

「なら遠慮無く。………多分、こいつの弱点は無い。強い相手にぶつかって、越えられない壁が目の前にあったとしても持ち前の頭脳、身体能力を持ってして乗り越えていくような奴や。そして、千歳幹部と同じように3つの扉を開くことが出来る。…開かずの扉すらも開けるかもしれん。こいつが戦場に現れたら撤退することが最善の戦術。タメをはっていられるんは、今んとこ立海軍の神の子、あたりや。今の救いは本人に戦う意思が無い事。少し前の遠山幹部のような状態にある事。なにがきっかけで戦場に赴くことになるか、…きっと不二がたき付ける――………と、思うわ?」

言い切った後、大きく小春の体が揺れる。座っていた椅子から落ちそうになった瞬間、隣に居た一氏が咄嗟に支えた。

「小春、お疲れ様や。ユウジ、小春を部屋まで連れてったり。そんで小春はたくさん脳を休めるんや。いつも無理させてすまんな。」

「……構わへんよ。アタシにはこれしかないんやから。」

小春はユウジに支えられ、部屋を出て行った。

「あかん、手詰りや。今日はここまでにして、次の会議までにそれぞれ案を一つでも持ってくること、小春の脳ばっかに頼っとったら小春が壊れてまう。それぞれ鍛錬に戻って基礎能力を高めること。以上。今回の会議はここまで、質問のある奴テェあげぇ。」

「あるっちゅー話や!」

謙也が手をあげる。

「なんや?」

「この越前って『エチゼン』と言うんやな?」

「…さっき小春が言いよったやん。」

「…よな。」

「なんすか?謙也さん。そんな簡単なことも分からんくなったんすか?ダサいっすわ。」

「いや…俺、こいつの苗字『コシマエ』って読むんやとばかり思っとったから脳味噌ごちゃごちゃになってしもうてな。」

「は?謙也さんはそんなしょーのないことで悩んどっt―――。」

「な、なんやて!?」

光の毒舌節を遮って白石が叫ぶ。

「なんすか、大将?」

「あかんッ金ちゃんが危ないかもしれん!」

「「!?」」

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