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Target宍戸亮end


「宍戸…さん?」

下を向いたまま何かを呟き、宍戸はグルリと顔をなんの前触れもなくあげた。あげられた顔に張り付けられた表情は満面の笑み。

「!?」

「ね――――――しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね――。」

「し、!?」

宍戸は長太郎の両肩を掴み、対峙する。鳳は恐怖から逃げたかったが、それは叶わなくなった。

「なぁ、長太郎…俺のことどう思ってんだ?なぁ、本心聞かせてくれよ。」

「お、俺は…宍戸さんはッ、憧れで……ッ。」

「違うよなぁ!俺に死んでしまえば良いって思ってたんだろう?そうだろう?」

「な、ちがッ!」

「違くないよなぁ!俺はお前のその一言で壊れたんだぜぇ?俺はお前だけは俺の味方だって、最後まで信じてたんだけどなぁ!」

「すみませッ!」

「今更謝れても遅ぇんだよぉお!お前らこそ人間として腐ってるぜ!虐めを楽しむなんざ、屑の中の屑だ!あー!俺はこの数か月間損をした。お前らがこんなことをする奴らだなんて思いもしなかったぜ!そこで俺は学んだ!誰も信じるなってなぁ!俺以外…いや、俺と稀李以外はみーんな敵だぁあ!幼馴染の岳人もジローもそんな奴だとは思わなかった!お前らって別に金持ちでもねーくせに!俺と同等のヒエラレキーだと思ってたのによぉ!楽しかったら幼馴染も簡単に虐めれるんだもんなぁあ!アハハハアハハハハハハッはアハハハハッはアハハハハあっはは!!――――あ?なんだよコレ…なんでこんなものが出てくんだ?」

そう言って目を拭う宍戸。目から静かに涙が溢れ出ていた。

「ッ宍戸さん!もう一度、もう一度だけ俺にチャンスを下さい!もうあなたを裏切りません!もう一度以前の様な関係に戻れるのならなんだってします!だからッ…戻ってください!宍戸さんッッ!」

宍戸に動揺が見られた。それをチャンスだと言わんばかりに鳳が言葉を発する。ここまで堕ちた宍戸をあちらの世界に引きずり上げるためだ。

「そうは、させねぇぜぇ?」

その風景を見ていた稀李が止めに入る。宍戸の両目を後ろから両手で塞ぎ、口を耳元へと近づける。

「なぁ、宍戸ぉ?そんなことしたらダァメ、あいつ等なんかの手を取ったら…同じことが繰り返されるんだよぉ?もう一回あいつらに虐められたいのぉ?あちらの世界に戻ったら辛いことしか待ってないんだよぉ?君は君の復讐の為にTVをネットを利用したんだ。君だってあいつらを君と同じ目に遇わせちゃったんだよぉ?最低だねぇ。軽蔑されちゃうよ?今までの関係を作り上げることだって不可能さ。だって一度壊れて戻るモノなんてこの世には無いんだよ?無理やり戻したってその部分は弱いまま。小突けばすぐに崩れるんだよぉ?そんな脆い物にすがるより、私たちの世界でなんにも縋らずに生きていく方が、楽であり楽しくなぁい?」

「そうだ、そうだ…な。そうだ、稀李の言う通りなんだ。そうだ、そうだ、そうだ……――。」

「あかんな、揺れとる。稀李、もう行くで?」

「そうだね。宍戸、行くよ?こんな場所居たら君の最荒な思考が穢される。」

稀李と白石は宍戸を支えるようにして歩き部室を出る。出かかったところで宍戸は自分の足でしっかりと立った。

「どした?」

「…長太郎…いや、お前ら…俺は一生許さねぇ。謝られたって許さねぇ、絶対に、ゆるさねぇ。一生後悔しろ、一生懺悔しろ、それを眺めることがこれから先俺の楽しみだ!シシシシシシシッ!」

「…そういうことー!しっかり悔いてあげてね!私を楽しませるようにも!よろしく!」

「俺も、しっかり喜ばせてくれな?」

信じられない。この人たちはまだまだ何かする気だ。この先残りの人生の方がはるかに長い、この時に、
何て、酷い。頭の片隅から消えることがないだろう、この出来事は。一生悔やむことになるのだろうが、それをさらに畳み掛けるなんて、

「…このッ外道!」

誰が言ったかは分からない。でも、

「あー…俺たちそう言われたらこう答えるようにしてんだわ――」

「「「お褒めの言葉ありがとう。」」」

稀李が宍戸の態度に満足してわらい、白石が宍戸の言葉にわらう。そして宍戸も、変わった自分に対して、裏切ったその他に対してわらう。

少しだけ頬が濡れた気がしたが、そんなのは気のせい。





―――――
宍戸編End
2012.01.25〜2012.02.07

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