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Target宍戸亮05


例によって例の如く証拠集めに回る三人。
四天宝寺の時よりもセキュリティが高く、安易にカメラを設置しようものなら盗撮として訴えられる。しかし、稀李と白石の敵ではない。人は一度に360°見渡せる訳はない。目だって、24時間365日あるわけではない。死角があり、空白の時間がある。そこさえつけば、あとは簡単である。

宍戸は宍戸で違う視点から眺めるこの光景を楽しんでいた。
あいつ等の顔、自分に降りかかってくる暴力の嵐、辛かったこの時間が、喜劇を見てる様に感じる。
なによりも、白石や稀李までもが無実なのに暴力を受けているところを見ると、心が喜びに震える。前までなら胸糞悪い物だっただろうに、
こんな風に思ってしまうのは、どれもこれも宍戸がこちら側に来たからだ。歪んだ価値観を持ったからだ。

「宍戸、お疲れ。もう、いいよ。」

充分証拠も取れたらこの一方的な敗戦は終わり。宍戸にもそう、声をかける。

「ああ、お前らもお疲れ、平気か?」

「私は私のメリットのあることの最低限度しかしないよ。よってこの程度の痣だって、ほんのかすり傷だ。」

「シシシッお前はそういう奴だったな。あとは、いつそれを流すんだ?」

「明日だよ?きっかり12時から。」

「ハ?えらく急だな。」

「急でも何でもないよ。前々から局には一報してたし、あとは証拠さえあれば存分に叩ける。その証拠のビデオだって白石が今届けに行ってる。」

「白石が、なぁ…。」

意味深げに呟いた。

「なに?」

「いや、お前と白石はいつも一緒に居るイメージしかなかったからよ。」

「別に、白石と組んで楽しいから私は一緒に居るだけ、白石が何も面白くなかったら一緒になんていないよ。そんな無駄な行為、退屈極まりない。」

「そうか、だったら――」

「…だったら?」

「――俺がお前の隣に居てもいいんだよな、稀李?」

宍戸が稀李の腕を掴んでくる。向き合う二人。稀李はいつにも増して無表情。

「あら、私の名前知ってたんだ。」

「白石に教えてもらったぜ?俺がこんな風になる餞別にってな。」

「…ふーん、白石…あの時の足止めに使ったな?ま、いいけど…離してくれる?」

「嫌だと言ったら?俺、稀李のこと気に入ったんだ。」

「もちろん、――力づくで剥がす。」

「!?」

稀李は金太郎持ち前の怪力で宍戸の腕を自分から剥がした。そして宍戸の足を払い転倒させる。地に這いつくばる形になっている宍戸の背中を稀李は踏みつける。

「調子に乗ってるんじゃないよぉ?宍戸ぉ。確かに君は私のお気に入りの玩具だ。君はそれ相応に私を楽しませてくれる。だけどね、私の隣にいていいのは私が決めた玩具だけだ。勝手に志願するな、腹立たしい。それに、私はお前に名乗ってない。名乗ってもらってないのに私の名前を口にするなんてお前は何様だ?玩具が持ち主の名前を軽々しく口に出してんじゃないよ。君、勘違いしないでね?君はこの私のおかげでこうなった。感謝はされども、お前が私を気に入るんだなんて上からモノ言ってんじゃねーよ。理解したか?宍戸亮。」

「……ッすみま、せん。」

「素直に謝ったことは評価してあげる。許そう、今度馴れ馴れしく私を気に入ってるだとか言ってみろ。その時はお前をあちらの世界へと突き飛ばしてやる。名前を呼びたかったらもう勝手にすればいいさ、終わったことだ。」

「………。」

宍戸は稀李に恐怖した。
肌で直に感じた。あの時白石から当てられたオーラの比ではない、比べることさえ烏滸がましい。ブルリと体を震わせる宍戸。これが恐怖なのは畏怖なのか、分からない。だけども、稀李についていけば自分はこの先何があっても乗り越えられると錯覚した。

「おやおや、怯えちゃったのぉ?そんなんじゃあいつらになめられちゃうんじゃないのかなぁ?」

「……あいつらに、なめられる?バカ言ってんじゃねーぜ。そんなことあるわけねぇだろ。そんななめるだなんてことが出来ないように、開いた口がふさがらない。そんな光景が俺らには約束されてるんだからな。」

「フフフッそうだね。あいつらの驚く顔、早く見たいなぁ。」

「焦んなよ、明日だ。明日俺はあいつらに復讐できる。後悔させてやるッ一生、絶対に!」

宍戸が最後、独り言のように、決意を固めた。

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