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Target宍戸亮02


白石だって、稀李属性。
ただ言われただけで済ますたちではない。宍戸に対して酷い威圧感を放つ。仄暗く、どす黒く、言いようのない雰囲気が宍戸を包む。宍戸はその雰囲気にのまれそうになりながらも負けじと睨み返す。

「オドレ、ええ加減にさらせ。お前と、俺どっちが主導権にぎっとると思っとん?それよりも俺と、お前、どっちをみんなは信用してくれるんやろうな?」

「そんなの俺に決まってんだろ!」

「ふーん。おもろい自信やな。…ホンマか?よう考えてみ?自分、虐められて信用は底辺に落っこちとんやで?そりゃぁ、最近転校してきた俺もどっこいどっこいやろうが……俺が今自分で自分の頬を殴って、少しでも呻き声をあげれば、どうなるんかな?『ああっみんな助けてくれこの男にいきなり殴られて』ってな?」

大げさに自分で自分を殴るふりをして、眉をしかめて泣き出しそうな顔をして宍戸に殴られたと訴え、涙なしには語れない、寸劇が始まった。そして白石がんべーと舌を突き出して唐突に終わった。

「ッ!?」

「俺は被害者になりうるなぁ、可哀想やなぁ、誰も信じてくれへんって悲しいやんなぁ。」

「っやめろッ!」

「もちろん、そんなバレたら俺が御終いになるようなショボイ罠なんて仕込まんわ。まぁ、その俺がショボイって思っとる罠にまんまと嵌っとるんが、この氷帝学園なんやろうけどな。」

宍戸が下を向く。白石の空気に毒されたようだ。

「ハァ…弱いなぁ、自分。しゃーない……俺が、稀李の正体を教えたるわ。これから起こる…餞別に、な?」

白石が稀李のことを語り始める。稀李のことを話すと言っても前世の記憶を明確に持っていると言うことまで、白石だって、それ以上は稀李のことは知らない。

「…遠山が遠野ってやつで、前世ぇ?」

「信じるか、信じないかは、宍戸次第やで。それからもう一個答えてやろうか、自分を今まで放っておいたのは俺らが楽しみたかったからや。ホンマおもろかったで?だってなぁ、健気にみんなの暴力を耐えとる自分…ホンマお疲れ様や。なのに皆を信じとるとか、俺らの腹筋を痙攣させたいんか?」

「ッ…この、外道!」

「お、その言葉久しぶりに聞いたわ。そんな言葉を聞いたら俺らはこう答えとるんや、お褒めの言葉あr―――。」

コツ、コツ、ざ、ざ――

「!?」

足音が聞こえ、宍戸の体が飛び跳ねる。

「シィ…静かにし。」

白石がその宍戸の動きを抑え、出来る限り、気配を消す。


「――――遠山君、俺に話って何?」

「あんなぁワイな、アホやから分からんことあんねん。」

聞こえてきた声は稀李の声と、鳳の声。

「俺で教えれることがあるんなら、教えてあげれるけど…なに?」

機嫌がよさげな声が聞こえる。

「宍戸のことなんやけどな!」

「え……。」

宍戸と、稀李が言った瞬間に鳳の顔が、声が、強張った。

「宍戸ってどんな奴なん!?ワイ、宍戸とも仲良くなりたいんや!」

「ダメだよ!」

稀李が仲良くなりたいと言った瞬間に鳳はダメだ、と叫んだ。

「ヒッ!?」

相応に驚いた反応をする。

「あぁ、ゴメン。でもね。あんな人と関わらない方が良いよ。」

「なんでなん?」

「金ちゃんと白石さんは最近転校してきたからあんまり分かってないかもしれないけど、あんな人と仲良くしてもいいこと無いよ!」

「なんで?皆、いっつも遊んどるやん。かごめかごめとかしとるやん?白石がいつも言いよるで!」

「…そっか、金ちゃん……。」

鳳が少し悩むようなそぶりを見せる。

「どうしたんや?」

「…白石さんに俺が言ったって言わないでね?」

「言わん!約束するで!」

「なら、金ちゃんの為に教えてあげる。あの人とは関わらない方が良いよ。あんなのと関わったら、金ちゃんの人生に傷がつちゃうよ。」

「人生に傷ぅ?」

「そう、傷。この先、金ちゃんは楽しく可笑しく過ごしていきたいでしょ?」

「おん!…けど、なんで鳳そんなこと言うん?そんなに宍戸と関わったらあかんて…。」

「最低なんだよ。あの人は、なんで俺が後輩なんかをしてるのか、分からない。それに…関わりたくもない、触れたりもしたくない。どうして他の人はあの人を殴ることが出来るんだろう。触っただけでも穢れそうなのに…。」

舌打ちさえも聞こえてくるようだ。

「そう…なんや。……分かった、鳳がそんなに言うんなら、関わらないようにするで!」

「金ちゃんはいい子だね。じゃ、俺は行くね?本当に俺が言ったって言ったらダメだからね?本当に、あんな人――――」

あぁ、これ以上のことを言ってくれるのかい?この先を言ったらもう――

「―――死んでしまえば良いんです。」

溢れでる鳳からの笑み。多くを語らずともこの言葉の破壊力は如何様か。言っていけないと言われる最大級の禁句。

「…了解や!ありがとな!」

――戻れないよ?色んな意味で、


聞きたいことも聞いた。
腹を抱えて笑いたい衝動を抑えながら稀李はさよならと、話をつけて鳳を帰した。

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