ClearBlack | ナノ


01


ボク、遠山金太郎言います。よろしゅうよろしゅう。今なぁ、ものごっついことが起きてんねん!あんな、ワイらの四天宝寺テニス部部長の白石蔵ノ介が皆に嫌われて虐められとるんや!テニス部のみんなも白石のこと信じとらんのんで!ホンマひどいわ!え?ワイ?ワイは見とるだけやで!やってメンドいんやもん。何も悪ぅない白石を虐めとーないし、やからって庇って一緒に苛められてあげるほどワイは優しゅーないで?だから傍観者きどっとるんや!
ちゅーかこの大阪弁もやめちゃってええかな?そろそろボロが出そうなんやけど、ええ?ええわな?
っはー、だっる。なんで金太郎ってこんな大阪弁な訳?演じるこっちの身にもなってほしい。あ?いきなりキャラが変わったって?当たり前じゃん。だって私本当の金太郎じゃないもん。所謂、転生成り代わり。え?転生成り代わりなら原作無視ってすればいいって?うん、そうだね。でもそんなの面白くないじゃん。原作通りに行ったら色々将来役に立ちそうな人脈と知り合って、仲良くできるんだよ。それを利用しない手はないよ。けど、今は後悔してるかな。始めは金太郎を演じるの楽しかったのに、白石が虐められ始めて面倒くさくなってきちゃった。だって金太郎ってこんな状況だったら天真爛漫な笑顔ふりまいて、虐めてる人たちからは「これは虐めじゃないのよ?」って言われて素直に信じそうなんだもん。良い意味で純粋、悪い意味で単純。私は傍観を気取ってる。それが金太郎がすること。最近白石見てないしなぁ。向こうも私のこと嫌ってるかもね。けど、目の前で大好きなキャラが自殺しようとしたら流石に私は助けることにするよ。それにまだ原作に四天宝寺が登場してないし、これからいっぱい楽しいことがあるのに、

「死ぬのは勿体無いでぇ、白石ぃ。」

ここは学校の屋上、五時間目真っ最中。金太郎は昼休みから自主休講をしていた。屋上のさらに上の屋根で昼寝に勤しもうとしていた。気持ちのいい天気にまどろみを覚えていると、ふらつく足取りで白石がやってきたのだ。
そのまま白石はフェンスへとまっすぐに向かって行った。此処で昼寝をしようなんて様子ではない。フェンスの向こう側に何の用事があるのだろう。なんの用だろう。そんなもの、自殺に決まっている。
白石がフェンスを掴んだ時に金太郎は言った。死ぬのはもったいないと。
白石は空から降ってきた陽気な声に驚いてバッと後ろを向く。そこにはへらへらと、まるで面白いものを見ているかのような表情で白石を見ている金太郎が居たのだ。

「白石ちょぉっとそこ動かんといてな。ふんっぎ!」

金太郎は給水塔から飛び降り白石の近くへを歩み寄る。

「…もう、五時間目始まっとるで?なんで金ちゃんがこないなところにおるん?」

震える声を抑えながら、平常心を気取り普通に話しかけてくる。

「ホンマか!?それ、ワイなぁ此処で寝とったんよ。そしたら昼休み終わってしもうたみたいやな!」

ニコニコと、場の空気にそぐわないテンションで言い放つ。

「そんなズボラな金ちゃんには毒手やでぇ?」

いつもの様に白石も言うが、覇気がない。生気が無い。完璧なオーラも何もかもが無い。代わりに漂うのは重い空気。

「んー?」

いつもなら素直に毒手に怯え、逃げるが、このタイミングで逃げるということは白石の自殺を止めることが出来ないという事。だから今回は毒手に反応してはやらない。

「なぁ、なんでフェンスに手ぇかけとん?」

白石の体がビクリと跳ねる。金太郎が毒手に反応しなかったからだ。白石を驚異の対象と見ていないからだ。白石はそんな金太郎に対して怯える反応を見せた。

「金ちゃん、も俺のことを殴りに来たんか?」

「そんなことせんよ!やって白石は悪ぅないやん。」

「え?……な、んで…。」

「ワイ知っとるでぇ。白石が悪ぅないってことや架空の因縁をつけられて虐められてること。」

「ハハ、金ちゃんはずっこいなぁ。俺は無罪なのに俺がずっと、今まで殴られてるところを見てただけなん?見て嘲笑っていただけなんやな。なんで助けてくれへんかったん!」

白石が感情的になっているところを始めてみた。それだけ精神困憊していたのだろう。原作とはまた違う白石を見ることができて金太郎は不敵に笑った。

「やって面倒くさいやん!ワイには虐められる要素が一個も無いのにわざわざ虐められとる白石を助けて一緒に虐められてあげるほどワイはいい人間やあらへんで。所詮人間ってそんなもんやないか?自分が一番可愛い。何よりも大切。どんなに自分自身が嫌いな人でも自分の命はどうでもええからって言って他人の命を救おうとは思わんやろ?白石は違うん?自分の命を他人に押し付けて、その重みで他人を潰そうとする偽善者なんや?」

「やからって…やからって。俺は辛かったのに、死にたいぐらいに…。」

「死にたいぐらい?そうだやなぁ…白石は今まさに死のうとしてたんやもんな。見てわかるで。せやけど、本当に辛かったんか?」

「っ!?」

白石が鉄砲玉を食らったかのような顔をした。

「もう、白い君を演じる必要は無いんやない?と言うよりも白い君を見ていたら鳥肌が立つんやで?ワイ、いっつも恐怖に震えてたんやで。もしくは笑いに耐えて震えとったんやで?白石、君今の状況楽しんでるんやないか?四天宝寺テニス部部長、浪速の聖書、白石蔵之介が虐められることなんて本来ならないもんな。ねぇ、本当の君、見せてほしいわぁ?」

本来の金太郎がしないような何かを企んでいる顔をして一歩また一歩と白石に近づく。白石の胸元に片手を添え挑発的に白石を見上げる。

「……なんや、ばれとるんや。それより金太郎もその言葉使いに天真爛漫な純粋な雰囲気作ってるやんな。戻ってええで?前からうっとうしい思うてたから。」

<< TOP >> 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -