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06


あれから何日たっただろうか。幸村は毎日制裁を受け、毎日その後に誰かしらの手当を受ける。
そして今回の制裁は比較的緩やかなものだったのかもしれない。幸村の意識が今までよりはっきりしていた。
せっかくしっかりとした意識のある中、今までの謎を解明するのは打って付けの機会だ。誰だか確かめようと幸村は閉じていた目をゆっくり開いた。


「――――――、…これはどういう状況かな?」

目を開けてみると白石と稀李が居た。やっぱりか、と気分が複雑だった。折角ならこんな腹黒な二人より別の誰かだよかったと、高望みをしてしまう。

「えーっとぉ、幸村クンが白石に膝枕をしてもらってる図かな?あ、あと私が湿布貼っておいてあげた。感謝して。」

「なんで白石君の膝枕な訳?俺、こんな趣味してないよ。」

「え?分かってやってるに決まってるじゃん。幸村クンのありとあらゆるプライドをへし折っておこうかと思ってね!今更気づいたの?愚鈍だねぇ。」

「………。」

幸村は痛む傷を庇いながら白石の膝から起き上る。

「あー、残念、もうそろそろ自然に野郎に膝枕してもらってる幸村クンが完成するとこやったのに、稀李は要らんこと喋りすぎやで。」

「その無様な幸村クンにしてなにか得があるわけ?」

「いや?全くあらへんけど?」

「…君は無駄なことしたくないんじゃないの?」

「別にー、…あぁ、無駄もキャラづくりの一環やから深い意味は無い。」

「あ、そう。」

「ねぇ、これも毎回毎回思うんだけど…わざわざ手当てするなら始めから俺を助けてよ。」

稀李と白石の会話に無理やり入り込み幸村は発言する。

「おお!よく喋る玩具だ。」

「ッその玩具ってやつやめてくれないかな?俺、人間なんだから。」

「おお!まだ人間としてのプライドが残ってたんだ!すごぉい、前回のあれでぶった切ったと思ったんだけどなぁ…残念。まぁ、でも?もう一度壊し甲斐があるって言うねぇ…フフッ楽しみ。」

「ッ……俺の質問に答えろよ遠野!」

いつまでもふざけてる稀李にキレて幸村は乱暴気味に言った。それに対して、稀李は厭らしい笑みを消し、無表情で幸村と対峙した。

「君、ふざけるのもいい加減にしろよ。玩具が持ち主に牙を向けてもいいと思ってんの?
畜生が飼い主に噛み付いてもいいと思ってるの?立場をわきまえろ。」

稀李は手を静かに幸村の首元へ持っていきゆっくり、ゆっくりと絞め始める。

「グッ……っ!」

「あのさぁ、確かにこうやって君と対等に話しで、君を手助けしてるが、お前は私より下の奴なんだよ。下っ端。下僕。下人!そんなのがこの私に暴言吐いていいと思ってるの?私は上下を重んじて欲しい人なんだよ?私は重んじないけれどね!君は分かってくれると思ったんだけどなぁ?当てがはずれたか…まぁ、次言ったらお前もあいつらと地獄へ落としてやる。そしてこれが私の持論だ。『玩具は治して長持ちさせる。』玩具だって傷ついたりしたら直すデショ?それと一緒だよぉ。玩具はたぁいせつに、だぁいじに使いながら壊してあげなきゃ。まぁ、玩具って最終的に壊れてバイバイなんだけど、一瞬ですべてを壊すんじゃなくてさ、じわじわってさ…ゆっくりゆっっくり壊していくんだよ。ゆっくり壊れて行く様を眺めるのが楽しいのに…他人に壊されることほどはらわたが煮えくり返ることは、無いんだよぉ?クスクスっ。」

幸村の首に稀李の指がくい込む。それに伴い、幸村はその拘束を外そうともがくがびくともせず苦しい表情を浮かべた。それを見た稀李は満足そう笑う。

「ぁ…カッッガ、ァ………。」

「稀李、もう力緩めたり。幸村クン死ぬで?」

「あぁ、本当。」

首にかけていた手を稀李はパッと離す。幸村は激しく咳き込みやっと新鮮な空気を吸うことが出来た。

「ッ、ハァ…ゲホッ……。」

「幸村クン、肝に命じときな。私は下剋上されることは嫌いだ。することは好きだけどね。君は私の所有物であって玩具だ。口答えしていいと思うなよ?」

あ、二年キノコの口癖を言っちゃったと一人楽しそうに稀李は微笑む。それをジィっと見つめるだけの幸村。

「…返事は?」

「……はい。」

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