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04


「なんッ!?」

「え?まさかプライドの一つや二つ捨てなくて何も失わなくて、私たちが何の見返りも求めないで慈善活動で君を助けると思った?そりゃ、そういう風に君を誑し込んでしまったのだけれど、本来ならもっと後から戻れないところで本性表して要求するつもりだったのに、白髪の馬鹿のせいで…。」

「そんなんするわけないやろ。俺らは、楽しみたいんや。それになぁ、幸村クン、今まで土下座なんてしたこと無さそうやん?プライド高そうやし?そのプライドのおかげで今まで誰にも助けを求めれんかったし、自殺をすることも出来ひんかったんやろ。あぁ、可哀想。でもなぁ、安心し?いっぺんだけ、この俺に土下座を見せてくれたら、俺は助けてやんで?」

「そーそー、たった一度、死ぬまで頭を下げろなんて言ってないんだからさ、たかだか一分だ。それで白石は助けてくれるって言ってんだぜ?本当に白石に助けてもらいたいなら、それぐらいしないとね?プライドを捨てるなんて、簡単デショ?」

二人が畳み掛ける。ニヤニヤとした顔つきで、幸村を追いつめる。
幸村は静かに膝をつき、手を膝より前に置き、頭を地面に近づけた。

「ッ…助けて、下さいッ!」

「キャハハハ!本当にプライド捨てやがった!」

「ん、助けたる。」

白石はそう答えた。幸村はその言葉を聞いて頭を上げた。ホッとした顔をする。

「私は、助けてやんねーから!」

変わりに元気よく稀李は嫌だと言った。
これでは約束と違う。幸村が力が無いなりにも抗議する。

「えー?何が違うの?白石は、土下座で助けてやるって言った。でも私はそんなこと一言も言ってなーい!」

「だったら俺は、白石君だけを頼る!」

「ふーん…じゃあ私は君の敵になることにするよ。」

「そうすれば?」

自分は一人ではないと思って強気になる。嗚呼、なんて言うことだろう。自分は一人ではない。そう思うと、自分に自信がつく。その自信を幸村はこのタイミングで発揮した。なんと愚かな。


「あー…幸村クン、俺だけじゃ助けれんわ。」

「え…?」

「やってなぁ…流石の俺でも勝てれへんねん。」

「どういう…こと?」

「俺も稀李に出会う前は自分が一番どす黒い歪んだ感情を持っとると思っとったんやけど……負けたわ。」

「んふふふ、白石の分際で私に勝とうなんざ百回転生しても早いんだよ。」

「つー訳や、俺だけで助けてやってもええが…その末に待っとるんは幸村クンにとって最悪な結末だけや。」

「ッ……。」

「さて、どうしよう?私に乞い願うなら、私は君をその立場から救ってやろう。さらには復讐もしてやろう。君が考え付かない最悪な方法を使ってね。」

復讐なんていう甘美な響き。幸村の考えは揺れ動く。傅くべきか…はたまた否か。

「助けて…下さい…。」

「態度で、示して見せて?スニーカーなのが絵にならなくて残念だけど……。私の前に跪き、私の靴にキスをしな。」

ピンヒールだったら面白いのにね、と稀李はケラケラ嗤う。そして片足を正座したままの幸村の前にズイっと出した。

「…………。」

甘い、囁き。
甘い、誘い。
甘い、蜜。
その甘イモノは脳の思考を麻痺させる。
幸村はフラフラとした働きで、ゆっくりと顔を靴に近付ける。そのまま、先に口付けた。

「…アハァッンフフっ…アハハハハハハハハハハハハハハアハアハハハハァアア!!本当にした!ようこそ底辺へ!君は自分の力でなく私たちの力を持借りて復讐した愚かな卑怯で卑劣で最悪なモノだ!君はそこまでしてこの状況から抜け出したいか!?そして復讐もしたいと?しかも他者の力を借りても?実に滑稽だ!君は鬼だ!人で非ず!私たちはやるからにはやる!止めたって無駄だよ?だって私は確認した!それでも君は承諾した!もう止められない!坂道を転がる石の様に!止まるときは意思が壊れるしかない!そんな君が私はたまらなく好きだ!」

アハハハハ、と耳残る笑い声。幸村は耳を塞ぎたいとは思わなかった。
感情を抉られ、潰され、プライドだってぶった切られた。幸村に残るのはもう、自分を虐めてきたヤツらに対して復讐したいという思いだけ。

「俺で君達は楽しめばいい。いくらだって俺は君達を満足させてやる!だから、アイツらに復讐を…っ!」

そんな言葉に稀李は微笑んだ。

「君を私は私が満足いくまで遊んであげる。そして君の望むことを一つ、叶えてあげる。それは立海に復讐…でいいね?」

「…それで、いい。」

一瞬迷いはしたものの、決断は揺るがなかった。

「契約成立だ!君は私の下僕だ、犬だ、家畜だ。私、遠野稀李に媚びろ。君は私のオモチャになることを誇りに思え。」

「は…い。」




「これから、…存分に遊んであげる、私を楽しませてね?幸村…クン?」

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