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「やっぱ痛みますか!?すみません、ホントすみません!」 私に氷嚢を渡しながら平謝りしてくる男子。ゴメンね。 泣いてばっかで、 「千愛!」 ジローと岳人が部室に入ってきた。 あと短髪の帽子をかぶった男子。 「あ、…うッ練、しゅ あ?」 「休憩に入ったとこ!大丈夫?また傷が増えちゃった!ゴメン!!」 ジローのせいじゃないよ。 私がよそ見してたからだよ。 「…千愛?」 短髪の男子が私の名前を呼んだ。誰?あ、もしかして、 「……りょ、う?」 目を凝らしてよく見れば髪の毛が極端に短くなった亮だった。印象が違い過ぎた。気づくわけないじゃないか、あんなに自慢の髪だったのに、バッサリ切っちゃったんだ。 「お、おぉ。なんで千愛がここに居んだよ!」 「ッあ、ジッく…に、誘わ、た。」 「ぁあ!?傷が増えたってどういうことだ!嫁入り前ってこと気にかけて生活してねぇのか!?」 「ッ…ぅあっ……。」 語ると長くなるんだけど、 むしろちゃんと通じるのか不安なんだよ。 「宍戸ぉ、それ不正解だC。」 出会ってから怒鳴ってばかりだった亮の態度にジローが不正解、と言った。亮はその言葉を聞いて私にそれ以上怒鳴ってくることは無かった。相変わらず眉間に皺は寄ったままだったけど。 「…悪かった。 とりあえず落ち着け、それからゆっくり話せ、な?」 「う、ん…。」 亮にまで気を使わせちゃったよ。 来ない方がよかったかな。 「そうだ!忍足も呼んでくるC!事情を話すならいっぺんに終わらせちゃった方が良いよね?」 私は黙って頷いた。 それを見たジローは外に走って行った。 戻ってきたジローはメガネの男子と跡部君を連れてきた。 「……跡部もついてきちゃった。」 ゴメン、と言いたげに頭をかいていた。 「別、に…。」 「なんなん嬢ちゃん?なんでそない泣いとんや?」 「千愛ー、これが忍足だよ。」 大阪弁を喋っている男子が忍足と言うらしい。 東京で大阪弁を聞くだなんて思ってもみなかった。 「…………グスッ。」 訳を話そうにも言葉が出ないんですよ。 ちょっと私が泣き止むまで待っていてはくれませんか? ……。 …………。 ……………。 「ウゼェ、事情があるんなら大人しくさっさと泣き止んで喋りやがれ!」 あー、跡部君のばか。 もう少しで止まるかと思ってたのにそんなこと言ったら余計に出ちゃうじゃんか。 「ック、ふうぅぅ…ッぅぅ。」 ほら、出た。畜生。 「跡部のばかー!!さっきも千愛を泣かせて、ダメじゃん!」 「知るか!勝手にこいつが泣いてんだろ!?」 そうですよ、勝手に泣いてるんだよ。自分の意思じゃないよ。だから自分の意思じゃ止まらないんだ。 ギャンギャンとジローと跡部君が言い争ってる。便乗して岳人と亮も、 「あのー…。話せないなら文字を書いてみるのはどうでしょうか?」 あ…君頭いい。 私は忍足君から書くものを受けとり文字を書き始めた。 流れ落ちる涙で文字が少々滲んでしまったが、読めないわけではない。 書けたものを忍足君に差し出すと跡部君に横から引っ掴まれてとられた。 滲んだ文字を睨みつけ、だんだんと眉間にしわを寄せてく。 ジローや岳人が私がどんなことを書いたのかと跡部君の左右から顔をのぞかせていた。 そんな行動に跡部君は鬱陶しくなったのか、二人を振り切り一段と豪華なソファーに腰を掛けた。 そして私の書いた文章を声に出して読み始めた。 ――――――― 2012,04,01〜2012,04,14拍手 |
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