汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


055


練習試合後、玖城は学校に来ることを拒否していた。成実はターゲットが居なくなって心底つまらなそうな…事はなく、毎日が忙しそうであった。学校に来て授業中はセリフを覚え、部活中はマネ業をそこそこに。そして帰宅する前に日吉の家により武術の稽古を付けてもらい、家に帰ったらヘトヘトで寝床に滑り込む毎日。

「ねぇ成実。大丈夫なの?」

「超余裕。もっときついことならしたこと有るし、後二、三日もしたら止めるから。」

「…何を考えてるの?僕にまで隠し事なんて、気分の良いものじゃないんだけど。」

「まぁ、そうだよな。全部が終わったら話すし、多分気付かれるから。」

「…そう。」

「そうそう。安心しとけ我が従僕。」

それから二日後。土曜日。成実はどうにかこうにか、完全なるオフ日を確保した。部活もなく、稽古も前倒しにしてた。日吉との約束も昨日までとなっていた。

「さぁて、ミッションスタート!玖城、頑張れよーっと。」

まず成実は神にメールして現在、玖城が着ている服のリサーチ。どうやら青系統のワンピースを着ているらしい。その情報を元に、成実はコーディネート。同様に青系統のワンピースを着て外出。ショッピングモールへと移動し、後ろから感じる鋭い視線を察知。玖城が予想通り付いてきていた。成実は、メンズの店に入り頭から足元までフルコーディネート。帽子で目元を隠してしまえばあら不思議、何処からどう見ても男の子の完成である。
格好が変わってしまい、遠くから青いワンピースを目標に成実を追っていた玖城は成実を見失ってしまったらしく、キョロキョロと当たりを見回し焦っていた。さて、ここからは逆尾行である。どのような行動に出るのか様子を見ると、何だろう。品の良いとは言えない男子が周りに集まっていた。子分なのか?
玖城が話し終わったらしく、蜘蛛が散るように去っていった。一人に話しかけてみようと思う。

「おい、お前。」

「あ?誰だテメェ。」

「俺もさっきの女についてる奴だよ。ちょっと便所に行ってたら集まりそびれたんだ。なんて言われたんだ?」

いきなり話しかけられては威嚇するように応えたが、一味だと言ってしまえば警戒心を完全に解いた。

「お前もか。簡単なことだ。あの女自身が見失ったから各自で探して拐えってな。」

「はッ馬鹿みてぇ。」

玖城、お前は馬鹿か。辱めを男にするつもりか。あ、俺は女で通ってるんだったぜ。

「自分そっくりな奴を見失うとかバカっつっても良いだろうよヒャッハ。」

「だな。」

「ったくダリィぜ。俺はあんな上玉とヤれりやぁなんだっていいんだよ。本当にヤれんのか?」

イラつきが見られた。様子から察するに、当初の約束とは違っているらしい。

「…不満か。」

「あぁ、不満だね。」

「だったら提案がある。いっそあの女をヤっちまおうぜ?」

「ハァ?」

成実の提案に対し、理解できないといった返事があった。

「おんなじような格好をして、同じ顔をしてんのが悪りぃんだよ。間違いましたーっつってヤればいいんじゃね?」

「…だな。頼む女も女だからな。」

損得を考えれば成実の提案に乗ることは必然。

「本当だ。じゃ、行動しようぜ?」

こう焚きつけてしまえば簡単だった。男の一人が玖城に「ターゲットを見つけ、連れ出した。」と言ってしまえば後は簡単に着いてきた。

役者が揃って、開幕である。

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