汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


053


「これで練習試合を終了とする!気を付け、礼!」

「「「ありがとうございました!」」」

これにて氷帝立海練習試合を終了となった。試合の勝敗にはあえて触れないでおこう。それは野暮ってものだ。さて、着替えて氷帝は立海から去るだけ。お疲れ様でしたー!

「みんな、帰るの少し待ってくれないかしら?見せたい物があるの。部室に来てくれないかしら?」

みんなの練習試合での疲労度なんてガン無視を決め込んで、帰ることを阻止する玖城。みんなが「またなんか言ってるよ。」「何あれKY?」「帰ってもいい感じ?」などそれぞれ言い合った。このままでは暴露どころか予想外の方へと話が進んでしまう。成実はそれを阻止するために、わざわざ声を上げた。

「皆さん、玖城さんが楽しい催し物を計画して下さっているようですよ。練習試合後の打ち上げとして参加いたしません?」

まさに鶴の一声。その言葉で跡部を始めとする氷帝レギュラー達。幸村を始めとする立海レギュラー達。にぞろぞろと準備がされている部室に行進。玖城はここでも女子としてのプライドをズタズタにされた。しかしぐっと我慢。30分もすれば玖城の敵である成実をどん底へと付き落とせるのだから。

「みんなに見せたいのは他でもないわ。そこに居るミーハー女、藤ケ院成実の本性よ。」

玖城が自信満々に唱える。成実は少々、目を揺らしてそこに佇む。紫木は玖城と成実の間に立ち、成実を背にし、守る体制へと入っていた。

「いったい何のことでしょう?」

「とぼけても無駄よ。油断したようね。私は見たわ、そして録画した。」

玖城は手に持っていたリモコンを操作し、映像を映し出した。流れるのはあのシーン。跡部たちを起こしに行って、態とらしく悪態をついたシーン。映像は一分もしない内に終わってしまったのだが、その後に流れる空気は張り詰めたものであった。

成実はワナワナと震え、玖城はその様子に微笑んだ。

「どうかしら、目が覚めたかしら哀れな騎士達?貴方達が一生懸命守っていたお姫様はこんなにも醜い雌猫だったのよ。お分かり?」

畳みかけるように玖城は言葉をつなぐ。みんなが発言するまで静かな空気が流れた。一番始めに口を開いたのは、立海のルーキー切原赤也であった。

「えっと…あれ?藤ケ院先輩の本性…ってあれ?秘密にしてたんでしたっけ?」

「秘密にはしていない。日常で演技していることは、我々も承諾済みだ。暴かれて困ることではないはずだ。」

赤也の疑問にファンの一人、真田が答えた。

「成実、他人に、玖城さんに見られちゃったんだ。あーあ。罰則適応。来月、大阪に行って分家の下で特訓ね。」

「嗚呼、やはりその罰を適応されるのですね。謹んでお受け致します。」

それからバレた事に対して滝は罰を言い渡す。こう言った場合に適応した罰がいくらか準備されているらしい。成実はバラす瞬間から覚悟はしていたため、全て納得して受けることにした。

「来月から毎日成実に会えないのか!?俺様耐えられねぇぞ。滝、他の罰にしやがれ。」

「跡部、藤ケ院家の決まり事に口を挟まないでよ。今回は厳しいものをするよ。様子から見るにワザとバラしてるみたいだからね。」

すると、跡部が成実としばらくの間離れ離れになってしまうことに対して嘆き悲しみ、別の罰で良いのでは、と提案した。しかしそんなもの却下である。

「萩之介の目は誤魔化せませんね。」

「当たり前でしょ。何年君の演技を見てると思ってるの。」

「我が君!私も分かりましたよ!お師匠には負けますけれど!分かりました!」

「ふふふ、紫木さん、偉いですね。」

「えへへへへ!」

梨花も分かったよ、と自己主張。成実に誉められてとても嬉しそうである。何という茶番か。そう思っても口に出さないことが正しい。当人達が幸せそうで何よりだ。

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