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「二人は跡部の変化をより気にするんやな。俺はやっぱりひぃさんの事が気になるわ。」 ジローと岳人の会話を打った切る様に忍足が発言。 「は?」 「やって、富布里がいきなり消えたんはひぃさんが話を付けに部室入ってから直ぐやろ?そん時富布里の奴、部室から出てきとらんっぽかったし、神様と結婚って常識を逸脱しとるやろ。」 今まで疑問に思っていたことを吐く忍足。 「忍足くん、長生きしたいのでしたら私の秘密を暴くようなことはしないで下さいね?」 忍足が疑念を成実に向けていると発言したとき、後ろから声がかかる。その声は言わずもがな成実のもので、忍足達は驚いて振り向いた。そこには西日を背に立っている成実が居た。 「ひ、ひぃさん…居ったんやな…。」 「秘密があっては…いけませんか?」 なんだろう。いつもより声が冷たい気がする。逆光で丁度表情が見えないからなのか。 「お、俺そろそろ試合だから…じゃあな侑士!」 「俺も!じゃーねー!」 ちょっと怖くなった岳人は忍足を置いてその場を駆け出した。いやいや、怖いからではない。試合がそろそろあるからだ。怖いからではない。断じて。 そして成実と忍足がその場に残った。 「…じゃあひぃさん。俺も行くわ。」 そそくさと成実の前から去ろうとした忍足。しかしそれを許さなかった成実。去ろうとした忍足の手を取り、行動を阻止。それから忍足の手を両手で大切そうに包み込みそれを見つめた。それから視線をゆっくりと忍足の瞳へと向けた。 「お待ち下さい忍足君。貴方が思っている私への疑惑、ここではっきり言ってくれねぇか?」 「言ってなにんなるんや?もっとぎくしゃくした展開になると思わんか?」 「いんや?思わねぇな。そもそもそんなにお前と距離を縮めた覚えはねぇ。お前とは一番距離を取らされていると思ってるぜ?答え合わせしようぜ?氷帝の天才。忍足侑士。」 成実は右手を忍足の手から離し、忍足の腕を白魚の様な指でなぞり、肩、鎖骨へと指を辿らせ、顎へと指を当てた。成実が忍足の顔を捉え、挑発するかの如く成実は妖艶に微笑み、忍足は鋭く睨みつけた。 「…やったら単刀直入に聞いたる。富布里も今の玖城も自分の手引きでこの氷帝、ひいては男子テニス部マネージャーにしとるやろ。話からして紫木んとこの神様っちゅーけったいなもんに別の世界からでも連れてきとるんやないか?富布里がいきなり居らん様になったんも元の世界に帰ったんちゃう?何が目的や?藤ケ院成実。氷帝の滅亡か。」 「…んふ…ッあっは!あははははは!ははははは!」 なんとなんと、殆ど大正解ではないか。洞察力が大変よろしいようで。神様なんて信じないであろう立場から、別の世界からだとか、連れてきただとか、まさかそんな世迷い言のような台詞が聞けるとは思わなかった。 それによりテンションが上がった成実はつい、高らかに声を上げてしまった。 だいたい当たり。しかし忍足は目的までは分からなかったようだ。ここが分からなかったら得点的には大幅減点である。 |
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