汝は悪女の深情けなりや? | ナノ


001


生徒が昇降口で賑わう30分前。一人はこれから朝練がある女子生徒。もう一人は部活に入っていない女子生徒がそこで出会ったのである。

「おっはよー!」

「あ、おはよー。どしたの?今日来るの早いね。」

「ウフフフフゥ…今日、三年生に転校生が来るんだって!ちょっとテンションあがっちゃってさ!そわそわして来ちゃった。」

「へぇ、そうなんだ。相変わらず情報通ね。どんな子が来るの?」

「あのね!藤ケ院家の子!」

「嘘!?あの藤ケ院家!?」

「本当だよ!私の情報に嘘なんてない!パパ、ファンだからパパから教えてもらったし!て言うか私もファンなんだけど!だから余計にワクワクしちゃって!」

「だよねー!あの家はマジ神懸かってる!って言うかあの女形の演技は素敵!酔いしれちゃうもん。同い年って言う事しか知らないんだけどね!」

「ホントだよねー!引き込まれるって言うの?っていうか詳しく知らないって勿体無い!今度私詳しく教えてあげる!DVDもなんでも持ってるから!」

女子生徒二人で本日転校してくる藤ケ院家の子について盛り上がった。そんな熱感が増している空間に静かに凛とした声が二人にかけられた。

「あの、少しよろしいでしょうか?」

「「はい?」」

話しかけられて振り向くとそこには可愛いと言える容姿でもあり綺麗、儚いと言える容姿のした人が立っており学校と言う場所において少々浮いてしまう服装。日本伝統の衣服。つまりは着物を着ている人がそこに居た。見るからに高そうな着物。しかし着られている感は全くなく、凛と着こなしておりその周りだけ空気が澄んでいるような感覚に陥った。

「職員室へはどのように行ったら良いのでしょう?何分、本日転校してきたばかりで…学校内の右も左も分からず…。」

「あ…もしかして藤ケ院家の転校生ってあなた?」

「はい、本日よりお世話になります藤ケ院成実と申します。」

「よろしくね!あ、職員室に用事があるんだっけ。案内してあげる。この学校、大きすぎて分からないよね。」

「ありがとうございます。」

成実と女生徒二人が職員室へと移動。その間でも女子特有のテンションの会話が続く。

「え!?じゃぁあの女形って藤ケ院さんなの!?」

「ええ、僭越ながら舞台に立たせていただきました。あのような未熟な演技を見られていたかと思うとお恥ずかしい。」

手を頬へ持っていき流れる様な指使いで頬をつたわせる。ため息がつい出てきてしまったがこれもご愛嬌。

「そんなッ!すごく綺麗だったよ!引き込まれたもん!」

「そう言っていただけると嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします。」

「うん!応援するよ!さっきから気になってたんだけど、なんで今日は着物なの?」

「まだこの学校の制服が届いていないのです。ですから正式な服装と言ったら着物かな、と愚直な考えで着てしまいました。悪目立ちしてますね。」

「そんなことないよ!とっても似合ってる!あ、もう職員室ついちゃったね。もし同じクラスだったらよろしくね!同じクラスじゃなくてもよろしくね!」

「はい、でもその時は、きちんと誤解を受けていない私と接してくださいね?」

「誤解?どういう事?」

「はい、とりあえず本来の一人称は正しくは俺、または僕です。」

「え!?」
「やっぱり!」

「え、なんで!?てかなんでやっぱりって!?」

「あの女形は男の人がやってたのに本物の女よりも女らしいっていう事で話題になったんだよ!?もしかして、と思ってたけど、でもお化粧せずにこんな女子らしいって有り得ない!」


「はい、こんな成りをしていますがれっきとした日本男児でございます。次から話しかけるときは私は男児と言う事を念頭に置いてどうぞお話ください。」

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