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「失礼致しブハァっ。」 放課後、成実がレギュラー部室にお邪魔するとそこには隅の方でキノコの栽培に勤しんでいる忍足の姿があった。 そこまで落ち込むとは思っていなかったため部室のドアを開き、視界に入った瞬間成実は思わず吹き出した。 「…恨むで…。」 「おいおい、俺を恨むなんてお門違いも良いとこなんじゃねーの?なぁ、ご子息?」 「あぁ、そうだ。成実は悪くない。」 「それ見ろオッシー。」 「跡部はどんな事したってひぃさんの味方やん!」 「まーまー。で?あれからなんか有ったんだろ?話してみろよ。な?腹抱えて笑ってやるから。」 成実は跡部に視線を向けた。跡部はそれに応えるように椅子から立ち上がり成実の方に手を伸ばす。成実は跡部の手をとり跡部が座っていた一際ゴージャスな椅子に腰を下ろした。 「ありがとう、ご子息。」 「ッ有り難き言葉!」 「…なんやこの茶番。」 「定期的なファンサービスだ。俺に触れるという最高度のサービスだ。さぁ、ぐだぐだ言ってねーでさっさと話せよ。」 「……あれから玖城の暴言が進化したんや…。同じ様なことを何遍も、何遍も…。」 「同じ様なこと?」 「せや、『浮ついたものは嫌い』『イケメンだからしゃしゃんな』『テニス部は風紀を乱す』だとかそんな感じな事。…心閉ざしとったけど、なんなんあれ。なんぼも言われたら嫌でも脳内入ってきたわ!」 「アハハハハハハハハハハ。」 思わず乾いた笑いが出た。 「笑い事ちゃうで!」 「え、じゃあ何事?」 「…泣き事?」 「泣き事の人挙手ー。」 忍足挙手。 「笑い事の人挙手ー。」 忍足以外が挙手。だって端から見るととても面白い出来事だから。それに玖城の被害を受けているのは忍足だけだから尚更である。他人の不幸は蜜の味とはよく言ったものだ。 「なんや!寄って集って俺イジメか!俺が喜ぶとでも思っとんのか!このドS集団め!」 「いや…俺としてはこのメンツみんなドSだと思ってる。が、ドSだからこそ屈伏させてやりたいというかなんと言うか…。まぁ、安心しろ。不幸が訪れちゃうのはテニス部だから。」 だって玖城のターゲットは氷帝男子テニス部のイケメンレギュラーなんだから!と、要らない情報は伝えず必要事項だけを述べると忍足以外のメンバーの顔が強張った。 「「「…は?」」」 「え、ホンマ?マジ?自分らザマァ!」 「マジマジ。その辺は保証したくなくても保証する。」 「成実ッ頼む!保証しないでくれ!犠牲なら侑士だけを!」 「岳人ぉお!自分ええ加減にしときや!」 「すまねぇがっくん。玖城が来ないと話が進まねぇんだ!」 「うわぁあ!!クソクソ!絶対呪われてる!なんか呪われてる!」 成実の衝撃的な言葉に岳人は頭を抱えた。 「何電気屋の息子が非科学的な事言ってんだよ激ダサだぜ。」 「んだとコラァ!テメェなんて教師の親持ってながら成績底辺じゃねーか!」 「親は関係ねーだろ!」 「俺だって家業関係ねぇよ!」 「どっちもどっちだC。」 |
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