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そういうと生徒たちは体育館から出て行った。 撫子と忍足、滝、跡部は最後まで舞台の上に居て見送っていた。厳密にいうなら跡部は茫然としていただけだが。 「跡部お疲れさん。もう終わったからそこで恥ずかしがっておくのも部活に速攻で行くのも自由よ。 ほら、滝も忍足も引っ込むよ。あ、そうだ帰りは寄り道して帰ろ。」 撫子が二人の手をもって袖にはけようとする。 「ねぇ、撫子本当にそれでいいの?」 いきなり滝が真剣みを帯びた声で言う。 「…もう、滝何言ってんの。私のことは気にしないでいいってーの。」 苦笑しながらも答える撫子。 「本当に、本当に後悔しないんだね。」 「………。」 「おい、どうしたんだ?」 妙な展開を察したのか跡部が会話に入ってくる。 「…跡部、ほんまに気づいとらんのか?」 「忍足、黙って。喋るな、息をするな。」 「俺死ぬやん。」 「けどこのままだと撫子が辛いだけだよ?折角跡部から――。」 「うるさいうるさいうるさい!!お願いだから!!……お願いだから黙ってよぅ…私だってバカに振舞えれる限界があるんだからさ。」 「跡部…撫子だって色々考えとるんやで?」 「ホント黙れよ。忍足…いいじゃんかこのまま、跡部ダッセーぷっぷくぷーで終わればさぁ…。」 「は?待てよ。なんの話だ、俺様にも分かるように説明しやがれ。」 撫子と滝と忍足の殺伐とした空気を感じたのだろう。 そして自分に向けられる滝と忍足の居心地の悪い視線も、 「いいかい。跡部、撫子は…本当は、跡部のことが――。」 「滝様黙ってください。お願いします。本当に、 私だって嬉しかった、でもあの言葉は私に向けられたものじゃないの。ルカに、桃の姫君に向けられたものなの!私なんかが!!私なんかが隣に並ぶのは…相応しくないの。」 滝のセリフを遮った。 ぎこちない無理やり作った笑顔を跡部に向ける。 「跡部気にしないで二人が言ってることは傑作にもならない戯言だから。」 「あほか、気にすんなっつーんが無理やろ、跡部もなんか言ったりぃや。」 トンと忍足に背中を押され、撫子と跡部がはっきりと、なにも間に遮るものが無く、向き合うことになった。 撫子は気恥ずかしそうに顔を下に向けることで精いっぱいだ。 いきなりこの空気の中撫子と直面することになった跡部も分かりやすく焦っている。 「私…っ。」 覚悟を決めた。というように話を切り出す。 それに対する跡部は慌てるしかない。 「おい、何言ってんだよ…冗談、だよな?」 「オフコース。」 伏せていた顔を上げて言った瞬間の跡部の顔を見た。 きっと滝も忍足も忘れることはでいないだろう。 なんせあのキングがこんな、こんな表現しづらい顔をするなんてな。 滝と忍足も後ろで笑っている。 いや、こんな展開笑うしかないだろう。 「てめっ!!」 「いや…だって、あんた今まで散々私に騙されたじゃん。KAITOの時も今回も、っなのになんでまただまされるわけ?ブフンっ!!」 「〜〜〜っお前なんて、地獄に堕ちろ!!」 「やだっ地獄に行ったら七人隊の皆に会えるじゃないっ。」 跡部は安易な悪口を吐き捨て体育館から出て行った。 きっと樺地にでも慰めに貰いに行ったんだろう。 樺地×跡部萌え 「ふっ、お二人さん乙☆もう滝様GJ!」 親指を立て滝を労う。 「撫子やるねぇ、まさか本当にのってくれるとは思わなかったよ。」 「やだなぁ、私が面白いことに力を惜しまないこと知ってるでしょ?それよりも忍足が参加してくれたことには驚きだよ。あんたアドリブとか弱そうだもん。」 「俺かてそれぐらいできるわ。何回も撫子の一寸劇見てきたんやし。」 「あ、そうか。うんホント楽しかったねぇ。球技大会も、この展開も。」 「ほんとだね。撫子はまだ一か月もこの学校に来てないのに、もうこんなに氷帝に馴染んじゃってさ、すごいね。」 「えへへへ、私は他人と分け隔てなく関わるよ。もう臨也さんみたいに!」 「さよか…。」 「おう!!人LOVE!!俺は人間が好きだ!! 愛 し て る !!」 テンションが高い撫子。 忍足でさえ少し追いついていけてない。 「……帰ろか。」 「スタバ行こうず。ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノを頼もうか。」 「店員さん泣くから止めたげて。」 「忍足が。」 「え。」 |
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