青春Destroy | ナノ


046


見学者二人もこの雰囲気に飲み込まれる。

「撫子と仁王は生まれてくる性別間違えたんとちゃうか?」

「否定はしないでおこう。」

「はっきり肯定しときぃや。」

「…………。」

「でもなんやろ…撫子のKAITO見てたら、胸がこう…キュンとするんやけど。」

「安心しろ。俺もだ。」

「男として俺らヤバいんとちゃう?……なぁ撫子!そろそろルカしてぇな!!」

忍足が叫ぶ。
もう、ときめかないようにと。

「ドキッ……。」

撫子の動きが固まる。

「お前…まさか。」

「べっ別にペテンさんに着さしてこの場を乗りきろうとか思ってないし。わ、私だってそろそろやんなきゃなぁって思ってた頃だし!
ペテンさん、服がくぽに着替えて下さい!私だってペテンさんみたいに綺麗になれるもん!!メイクの力で!!」

テンションがあがりすぎて自分のキャラを保てていない。

仁王はその場でウィッグをとり衣装を脱いで撫子に渡す。
撫子は受け取りすぐに準備室へと向かっていった。

「メイク面倒くさいのぉ…つか目の前で男が着替えてるのを見ても恥ずかしがらんとは女としてどうなんじゃ?」

「ほら仁王君さっさと行動したまえ。」

「…プリ。」

(((厨2か…。)))

仁王以外の心が一つになった。

準備室にて嘆きの声が聞こえる。

「あーぁーあーあ、ハァ…あんなクオリティの後で私の低クオリティのルカ姐さんを晒すことになるとは…ごめんねぇルカ姐さん……。
チッ忍足もペテンさんので満足しやがれド畜生。つか忍足って足が好きなんだよな?この衣装足とか見えねぇじゃん!本末転倒だよ!!」

ぶつぶつ言いながらもちゃんとルカの衣装に着替える撫子。
着替えて、メイクし終わって監督御用達の鏡を覗いてみる。

「…ねーよ。これはないない。事故だよ事故。ごめんルカ姐さん…目つき悪いよー。ごめんねー?忍足のバカがぁ。
あー恥ずかし、これをみんなに見せるのか……。」

撫子は部屋を見回し使われていない暗幕を見つける。

「…ただ普通に出て行くのはやっぱりおもしろく無いよねぇ?」

ニヤリと笑う。
撫子は暗幕を頭から纏いみんなが待つ部屋の扉を開く。


少し開かれた扉から飛び出してきた撫子。
待っていた四人組は何事かと驚く。

撫子は仁王めがけ走る。
仁王を押し倒し、馬乗りになる。そして細い首に手をかける。狂気に走った目をしている様。

「フフフフフ…がくぽ様お久しぶりですわ、覚えていらして?」

「………覚えているさ。忘れるわけないだろう……婚約者のルカだろ?」

「あら覚えていらしたのですか。もう3か月も会いに来てくださらないから私のことなど忘れてしまったのかと思いましたわ。」

がくぽは纏っている暗幕をずらし顔を出させる。
そこには婚約者のルカの顔があった、がくぽは白い指でルカの頬をなぞる。

撫子とペテンによる一寸劇が始まった。
KAITOの時茶々を入れていた忍足だが今回は大人しく見るそうだ。
柳は刮目せよ!!と言わんばかりに目を開く。脳裏に焼き付けようとしている。
柳生は相変わらずフラッシュをレーザービームの如く絶え間なく発する。


「俺は今忙しいんだ。後にしてくれるか?」

「フフ…何故がくぽ様が忙しいか当てて差し上げましょうか?今この城にはレン様が居ないでしょう?…それと付き人のKAITO様も。」

「何故城にいないルカが知っている!?」

「やだ…そんなに睨まないでくださいまし。大丈夫ですわ、レン様は私の家で過ごしているもの。」

「っレンを返せ!」

「それは出来ない相談事ですわ。だってレン様が助けてって仰られて私のところに来たんですもの。
疲れたそうよ?年中監視される立場に、逃げ場のない居場所に…地位も、名誉も何もかも投げ出して逃げたいほどにレン様は疲れ切っておいでよ?」

「そう…なのか…とりあえず無事で良かった…KAITOに知らせてあげないと。」

がくとはほっとする。
しかしがくぽがKAITOと言った瞬間にルカの目つきが変わる。

「KAITO…KAITO、KAITO!私が何故この様な脅迫紛いなことをしたかお分かりになりませんか?貴方様は何時もKAITO様を見ているわ。私はこんなにもお慕いしておりますのに…少しもこちらを向いては下さらない。ルカは寂しいのです…。
婚約者になって何年が過ぎたのかご存じ?五年ですわ、五年…それなのにがくぽ様は…いつも…いつも私と会っていても、口を開けばKAITO、KAITOと…。」

「…すまなかった…。」

「謝るくらいならガーディアンなんて要らないのですよ?私を私だけを見て下さらないがくぽ様なんて…。」

がくぽの首にかかる指に力を入れる。

「ぐっ…。」

がくぽの顔が苦痛に歪む。

「ねぇ…がくぽ様?
私と一緒に堕ちて下さらない?」


「はい、カットお疲れさまです。」

今回は柳生が止めに入った。



「っはぁ…忍足!なんで止めてくれなかったのさ!私がペテンさんに馬乗りになった時点で止めてくれると思ったのに!計算違いだったぞ!バカァ!!」

見事な逆ギレである。

「…せやかて…KAITOの時は怒ったやん。」

「あれはKAITOのノリだったじゃんか!!私止めに入ってもらわなきゃいつまでもやるよ!」

「迷惑!」

「のぉ、撫子?」

「何?…あ、さっき私のお遊びに付き合ってくれてありがとさん。」

「いや…あの台詞って即興なんか?」

「そだよ。だって始めで忍足が止めてくれると思ってたし。柳生君が止めに入ってくれなかったら…。」

「私が止めていなかったら…どういうことになっていたのです?」

「多分がくぽを殺して、ルカも自殺。無理心中ですな。」

「止めて良かった…。」

「撫子さん…見事な妄想劇だな。」

「褒めても何もやらないぞ、でもありがとうマスター!」

「サイトの更新に力を入れてくれると嬉しいな。」

「仰せのままに!
さて…もう時間無いし、ペテンさん…ワルツ踊れる?」

「少しなら踊れるぜよ。」

「せっかくドレス着て音楽が流れる環境なんだから一曲、今日の記念に。」

「いいぜよ。」

柳と忍足は撫子の言葉をくみ取り音楽のセッティングに、
そして仁王は撫子のそばに跪き手を伸ばす。

「Shall we dance?…プリ。」

撫子はその手をとる。

「Yes,let’s.」

踊り始める二人。
がくぽとルカが二次元から出てきたよう。
柳と忍足は今日何回食い入るように二人を見つめたのだろう。
柳生は今日だけで何回シャッターをおろしたのだろう。

撫子にとっても仁王にとっても柳生にとっても柳にとっても忍足にとっても充実した数時間だった。

踊り終わった後に解散。
撫子は柳生にデータをもらう約束をした。立海に取りに行かなくては、
これにて撫子初めての撮影会が幕を閉じた。

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