青春Destroy | ナノ


040


練習試合も順調に終わり、監督からの挨拶をいただいた。
それからコート整備ボール片付け。その他諸々の事をしていて撫子が部活から解放されたのは3時50分。待ち合わせギリギリだ。
部室から出てきた忍足を逮捕じゃなくて確保。忍足以外の部員はすでに帰っていた。

「忍足アーユレディ!」

「Yhaaaaaaa!!」

忍足と共に気合を入れる。
これから始まるのは練習試合なんて目でもない位の撫子にとっての一大イベント。
むしろこうやってあわせをすることを目的として上京してきたと言っても過言ではないからね。

「ドゥーザゴーズオン!」

「Yhaaaaaaaaaa!!!」

撫子が片手を差し出すことで流れで忍足はキャリーを渡すことになった。

「帰ってよし。」

撫子はお目当ての物は手に入ったと言う態度で忍足に「帰れソレントへ。」みたいな態度で手を振った。

「YhaaaaaaaAAA!!!ってちょい待ち。デバガメさせてぇな。」

「来んのかよ。…まぁいいかマス柳君も居るけど良いよね?答えは聞かないけど。」

「なんで柳も居んねん。」

「文句言うなら来んな。」

忍足の対応もそこそこに撫子は正門の方へと歩いて行った。

「……。」

撫子の後をおとなしくついて行く。大きなキャリーをゴロゴロ言わせながら。
キャリーはまた撫子に押しつけられたようだ。

門の所に行くと柳と、少し離れた所に仁王と柳生が居た。

「マスター!」

「来たか。もう4時を46秒過ぎているぞ。」

「実にサーセンした。…でもまだペテンさんが来てないようで?」

「撫子さん。ペテンさんと合わせをするのか!?」

「あれ?知らなかったっけ?」

「あわせをすると言った事実しか知らなかった。」

「伝え損ねてたか。すんません。けど、凄いだろ!?大御所様だぜ!?」

「予想外だ……。そんな大御所と会うことが出来るなんて…。」

「…なぁ、ペテンさんって誰なん?」

撫子と柳が大御所ペテンの話題で盛り上がっているところに忍足が爆弾発言をかました。
二人の間では知っていて当然じゃね?と言う雰囲気があり、忍足の発言には思わず絶句である。

「「…………………。」」

「なんか言ってぇな。」

忍足から距離をとり柳と撫子は話す。

「聞きました?マスター。あのメガネ、ペテンさんのこと知らないんですって。」

「信じられないな。と言うより何故そんな輩が此処にいるんだ?」

「今回の衣装提供がメガネだからなんだよね。」

「そうか…。」

ヒソヒソヒソヒソ、忍足超アウェイ。

「一人にせんといてー、俺も仲間に入れたってぇ!ついでにペテンさん?が何者が教えたってぇ!」

「ググれカス。」

「愚かだな、忍足。」

忍足を散々弄っては投げ弄っては投げ、そんなことをしていると4時15分を回っていた。
流石に遅い。

「遅いなぁペテンさん…メールしてみよ。
ところで何で仁王がそこに居るわけ?」

「誰かと待ち合わせをしているらしい。」

「ふーん…。」

会話をしながらメールを送信。

『今どちらにいますか?私はもう氷帝の門の所にいます。』

会話は相手の目を見てするべき物だと思うよ。

送信した瞬間仁王の方から『ペテン師が笑う頃に』が聞こえる。
たまたまだろう。
偶然だろう。

しかしタイミングがよすぎることも問題だし、なによりボカロ曲を受信音にしているところが問題なのだよ。

「「「……………………………………。」」」

同じことを思った柳に撫子、忍足の間に沈黙が流れる。
同じくして仁王と柳生は撫子達の方を見ている。

「…………………………つかぬ事をお伺いしますが…ペテンさんですかね?」

「……椿崎って…撫子さんなんか?」

「…龍ノ啼ク。」

撫子はこれからあわせをするジャンルのタイトルの半分を言う。

「箱庭拠リ…じゃ。」

そして仁王もその続きを呟いた。

「「……はぁぁああぁぁあ!?」」

次に紡ぐ言葉は同じで絶叫であった。

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