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「って何でお前らが居んの!?」 「何でスコートやないねん!」 忍足の心の叫びが飛ぶ。 撫子の姿はただのジャージである。 「わざわざ一試合のためだけに誰が履くか!てめぇが履いてろ!!」 最近はスコートを見かける事はプロ以外に無いぜ? 「昔テニスやってたんだろ?どの位の実力か見てやるよ。」 跡部を始め半数以上はこの意見。 「よし、仁王君も撫子君も準備は良いな。試合開始だ、行ってよし。」 「サーブは私が貰いまぁす。それぐらいサービスしてよね。三年位ろくにやってないんだから。」 「了解ぜよ。」 「んじゃ撫子行きまーす。」 撫子はナックルサーブを繰り出す。 本家ナックルサーブより若干キレが悪いがちゃんとはね方が不規則になっている。 口頭の説明だけでここまで打てているなんて大したものだ。 「っ!」 仁王は予想もしていなかったので避けることしかできなかった。 「レッ…赤也君打てたよ!」 コートの横で見学している赤也にピョンピョンしながら報告する。 よほど打てたことが嬉しいのだろう。 「流石ッス撫子さん!」 「赤也…お前が撫子さんに教えたのか?」 「そうっス!口で説明しただけなんスけど…流石撫子さんっすね!」 「…やるのぉ椿崎。」 「次行きまーす。」 流石立海レギュラーと言うべきか次のサーブにはしっかり反応して打ち返してくる。 撫子は内心テンパりながらも何とか返す。撫子の打ったボールがたまたまネットに当たり落ちる。 「っしゃー!ブリ天の奇跡ぃ!!ほっあたぁ☆んじゃ次、ん゛あー、あー…ん。」 ボールを高くあげサーブを打つ。 「そのボールどこに跳ねるかわかんねぇぜ、俺以外はなぁ!」 赤也の声マネをする撫子。 30分弱も話していたんだ、声の質を覚えるには十分だ。 「っ!?赤也!?」 仁王は驚いてボールから目を離し撫子を見てしまった。 「へ!?俺!?」 「ただの声マネだよ。」 もう、動揺させるネタは尽きた。あとは撫子の実力でポイントをもぎ取るしかない。 そして試合が終わる。 2−6で撫子が負けてしまった。 勝つ気はなかったので悔しくはない。むしろゲームをもぎ取れたので嬉しい限りだ。 「すげぇC!撫子ってテニス出来たんだね!」 「続けてたらまだ強くなってたかなぁ…。」 遠い目をしてしまう。 続けておけばよかった。 「椿崎先輩もサーブ速いですね!なんて言う技ですか?」 「別に何も名前なんてないよ。 普通のサーブを打ってるつもりだよ私は、勝手に速くなってるだけだから。」 「今度俺のスカットサーブを教えても良いですか?」 「まぁいいんじゃない?マネージャーの仕事に差し支えないように、鳳の練習に影響が出ないなら教えてね。」 「はい!」 「そういやぁ、ジロー…ジローの憧れの人って誰?幸村君?」 「違うC、俺の尊敬する人は丸井君だC!撫子来て!」 「え?ちょ待っ。」 撫子はジローに手を引っ張られブン太がいる立海メンバーの輪の中に突進した。 「丸井君!」 「げっジロ君…。」 「撫子!丸井君だよ!ね、カッコいいでしょ!?」 「丸井君!これ撫子って言うんだよ。」 「知ってる。」 朝、一瞬だけ慰めてくれたからもう関わりはある。 「撫子はデカいんだよ170cm超えてるんだってさ!」 「…見ればわかる。俺よりデケェし…。」 目の前で天使と天使がイチャついてる!ここは天国か!? 「可愛い…。」 撫子がポロリと心の声を漏らす。 「男に可愛いとか言ってんじゃねぇ!」 「さーせんした!チョコあげるから許して!」 たまたまジャージの中に入っていたチョコレートでつろうとする撫子。 流石にそれでは許されまい。 「お、サンキュ。許してやぁ、このチョコに免じて。」 許された。 |
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