青春Destroy | ナノ


039


「って何でお前らが居んの!?」

「何でスコートやないねん!」

忍足の心の叫びが飛ぶ。
撫子の姿はただのジャージである。

「わざわざ一試合のためだけに誰が履くか!てめぇが履いてろ!!」

最近はスコートを見かける事はプロ以外に無いぜ?

「昔テニスやってたんだろ?どの位の実力か見てやるよ。」

跡部を始め半数以上はこの意見。

「よし、仁王君も撫子君も準備は良いな。試合開始だ、行ってよし。」

「サーブは私が貰いまぁす。それぐらいサービスしてよね。三年位ろくにやってないんだから。」

「了解ぜよ。」

「んじゃ撫子行きまーす。」

撫子はナックルサーブを繰り出す。
本家ナックルサーブより若干キレが悪いがちゃんとはね方が不規則になっている。
口頭の説明だけでここまで打てているなんて大したものだ。

「っ!」

仁王は予想もしていなかったので避けることしかできなかった。

「レッ…赤也君打てたよ!」

コートの横で見学している赤也にピョンピョンしながら報告する。
よほど打てたことが嬉しいのだろう。

「流石ッス撫子さん!」

「赤也…お前が撫子さんに教えたのか?」

「そうっス!口で説明しただけなんスけど…流石撫子さんっすね!」

「…やるのぉ椿崎。」

「次行きまーす。」

流石立海レギュラーと言うべきか次のサーブにはしっかり反応して打ち返してくる。

撫子は内心テンパりながらも何とか返す。撫子の打ったボールがたまたまネットに当たり落ちる。

「っしゃー!ブリ天の奇跡ぃ!!ほっあたぁ☆んじゃ次、ん゛あー、あー…ん。」

ボールを高くあげサーブを打つ。

「そのボールどこに跳ねるかわかんねぇぜ、俺以外はなぁ!」

赤也の声マネをする撫子。
30分弱も話していたんだ、声の質を覚えるには十分だ。

「っ!?赤也!?」

仁王は驚いてボールから目を離し撫子を見てしまった。

「へ!?俺!?」

「ただの声マネだよ。」

もう、動揺させるネタは尽きた。あとは撫子の実力でポイントをもぎ取るしかない。

そして試合が終わる。
2−6で撫子が負けてしまった。
勝つ気はなかったので悔しくはない。むしろゲームをもぎ取れたので嬉しい限りだ。

「すげぇC!撫子ってテニス出来たんだね!」

「続けてたらまだ強くなってたかなぁ…。」

遠い目をしてしまう。
続けておけばよかった。

「椿崎先輩もサーブ速いですね!なんて言う技ですか?」

「別に何も名前なんてないよ。
普通のサーブを打ってるつもりだよ私は、勝手に速くなってるだけだから。」

「今度俺のスカットサーブを教えても良いですか?」

「まぁいいんじゃない?マネージャーの仕事に差し支えないように、鳳の練習に影響が出ないなら教えてね。」

「はい!」

「そういやぁ、ジロー…ジローの憧れの人って誰?幸村君?」

「違うC、俺の尊敬する人は丸井君だC!撫子来て!」

「え?ちょ待っ。」

撫子はジローに手を引っ張られブン太がいる立海メンバーの輪の中に突進した。

「丸井君!」

「げっジロ君…。」

「撫子!丸井君だよ!ね、カッコいいでしょ!?」

「丸井君!これ撫子って言うんだよ。」

「知ってる。」

朝、一瞬だけ慰めてくれたからもう関わりはある。

「撫子はデカいんだよ170cm超えてるんだってさ!」

「…見ればわかる。俺よりデケェし…。」

目の前で天使と天使がイチャついてる!ここは天国か!?

「可愛い…。」

撫子がポロリと心の声を漏らす。

「男に可愛いとか言ってんじゃねぇ!」

「さーせんした!チョコあげるから許して!」

たまたまジャージの中に入っていたチョコレートでつろうとする撫子。
流石にそれでは許されまい。

「お、サンキュ。許してやぁ、このチョコに免じて。」

許された。

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