飲ませても飲むな |
「ハイハイ、皆さんちゅーもーく!」 撫子が放課後、練習を始める前にレギュラー陣を集めた。 「アーン?なんだ?」 「アーン?なんだ?…じゃねーよ。私、椿崎撫子はマネージャーとして君たちを見ていたら足りないところを発見しました。」 「なんや?」 「それは…走り込みです。 なんで君達は走り込みの日を作らない!走り込みは基礎の基礎!基礎が出来ずにラケットなんて握れると思うな!帰ってやってる?そんないくらでもねつ造出来るような言い訳は聞かねーぜ!実際やってないだろう!サボってんだろう!特にジロー!岳人!あと忍足!」 「「「ゲ、バレた。」」」 「私を舐めないでよね。伊達に人間観察という名の萌えウォッチングしてるわけではないのだよ。つーわけで今日の練習メニューは私と、滝の独断と偏見で走り込みdayとしまーす。異議ある人は滝に言ってね。ストップウォッチを持ったらテンションがおかしくなっちゃった、あの滝様に言ってね?」 異議あり、と言わんばかりに腰を浮かせていた宍戸は、滝に…と言うところで体勢を元に戻した。 「フフフ、宍戸、賢明な判断だよ。」 「じゃあ、可決ー。ほれ準レギュラーにみんなコートに好きなだけ入れぇ!」 ぶっちゃけ、準レギュラーや平の人たちをコートに入れさせて、新たなCPを発掘したいという下心があったりする。 「「「ありがとうございます!!」」」 わらわらとコートの中に入っていく。準レギュラー達。それを恨めしそうに睨む忍足。少しイラッとしたので撫子は目潰しを決行。しかし伊達メガネに阻まれビビらせるだけに終わってしまった。 「チッッさて…『第一回、逃げろセリヌンティウス。メロスなんて見捨ててしまえ。』を始めまーす。」 「やんやねんそれ…。」 「タイトルに意味など無い。ルール説明ー…決められた一周辺りの設定タイム内に外周一周出来たら罰ゲームなし。タイムアウトしちゃったら罰ゲーィム。」 「なんなんだ?その罰ゲームって…。」 体力に全く自信のない岳人が恐る恐る聞く。一番に飲むのは自分かもしれないから。 「よくぞ聞いてくれました!乾でんちさん特性、野菜汁!通称乾汁!をとりあえず紙コップ一杯をイッキしてもらいまーす。」 撫子は紙コップを取り出し禍々しいオーラを放つ飲み物を目の前に持ってきた。 「却下だ。」 「跡部なんかに答えは聞いてない。」 「撫子ーそれ本当に飲み物なのー?」 「うん……多分。ちゃんと食べれる物しか入れてないから。」 「食べ物しか入れてないのにそれですか…。」 「あと…入ってるとしたら私の愛☆かな?」 「あかん、吐き気が…。オエ、」 「滝、忍足の設定タイムを30秒減らして。」 「うん、いいよ。」 「ちょっ…!」 「じゃこっからスタート。ずるしたら滝が察知してくれるからね。近道しようだなんて思っちゃダメだよ?ヨーイ、スタート!!」 飲みたくない一心で一斉に走り出すメンバー。 「あ、一周ごとに設定タイム5秒ずつ短くなるから!」 「「「な!?」」」 走りながら振り返る。 「振り返る暇があるならキリキリ走れー。……滝、本当にストップウォッチを九個いっぺんに操れるの?」 「勿論、僕に不可能はないよ。」 「…デスヨネー。じゃ任せた。私は乾汁と準レギュラーと平の分のドリンクとか用意しなきゃだから。」 「分かった。あぁでも乾汁だけはレギュラー人数分、用意しといてね?」 「…フッフッフ、勿論ですよ滝…みんなに飲ませるに決まってるじゃない。逃げ道なんて始めから無いのさ。」 「撫子も悪だねー。」 「滝こそ。私の計画のバックについてくれてるのに、滝もレギュラーからしたら悪だよ。」 「悪でもなんでもいいよ。僕が楽しめればいいんだ。」 滝の純粋な?笑顔にぞっとしながらも撫子は自分の任を果たすべく行動に移した。 数十分後。 撫子が任から戻り、乾汁を携えて戻ってきてみればレギュラー全員が滝の周りでのびていた。 「え…みんな脱落?だいたい何周で?」 「あ、撫子おかえりー。えっと…岳人が一周1kmで8周が最低、最高が樺地の20周かな。」 「え、なにそれショボ。」 「な、んやっねん。撫子、は見と、るだけや、けんそん、なんっ言えるんや!」 顔を真っ赤にして、吐息(笑)を吐きながら、輝く汗(笑)を額、首筋、鎖骨に流しながら撫子を無意識にあつーい視線で睨みつける。 「なにこれエロい。とりあえず写メるわ。」 とデジカメとケータイを取り出しすべての奴らのエロい(笑)の顔を収めた。 「んー、君らヤバすぎ。ごちになりまーす!で、忍足…これ私が昔……小6の頃やってたメニューだよ?私はだいたい…えーっと14kmは行けたよ?いやー、でも嫌いだったねぇ。仁王なんてあるってわかった瞬間体調不良になってたからね。」 ひぃ、ふぅ、みぃと指折り数える。 「嘘っ!?クソクソ!俺撫子のレベルにもとどいてねぇ!?」 「…この体力バカめが…。」 ちなみに跡部は18周。4kmしか違わなかったから悔しかったようだ。 「跡部…だけには乾汁に青1号入れてやる。」 ポッケから出てきた青一号。あぁなんて真っ青。 跡部には青1号の入った乾汁を渡し、他のメンバーにも渡していく。 「ほら、タンと飲め。」 「「「「……………………。」」」」 受け取ったまま動かない。 「え?飲まないの?時間がもったいないなー。」 滝も若干キビれを切らした。 「………………。」 滝の説得にも今回は耳を貸さない。むしろかせない。 本能が告げる、飲んだら後悔すると…。 「お し た りぃ?またハイポーション(三作目)飲みたいの?」 「飲むわ!ゴクゴクゴクゴクゴクゴク…。」 「「「イッター!?」」」 ………。 「侑士?」 「ゥエ…あ…。」 その場にバタンと倒れる。 「侑士ー!?」 岳人が忍足の体を揺する。 「うん、忍足が正しいね。周りがこんな反応して倒れるとこ見たら飲めなくなるし…。」 「これ…本当に飲んでも平気なのかよ。」 「うん、平気だよ。乾でんちさんの友達は美味しいよ、オススメって言ったらしいし…。……ほらいい加減飲んでよ。じゃないと…青酢、赤酢、ペナル茶、イワシ水、粉悪秘胃、甲羅、をブレンドした、絶対に飲んだら―――になるだろう…というドリンクをジョッキ一杯で飲ませまーす。滝が。さぁ、飲め。」 「「「チクショー!!」」」 ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク…。 「イッター!むしろ逝ったー!倒れたー!」 屍と化すレギュラー全員。何というか…壮観である。 「いい気味だザマァ。特に跡部。」 「うん、なんか僕の心も透き通ってきたよ。」 すごく良い笑顔です。 ふと、滝の右手を見るとビデオカメラの様な物が握られていたが撫子は見なかったことにした。 ―――――――――― 50000hit企画第五弾 彪壱様リクエストの『乾でんちさんのサイトを参考にして作った乾汁を氷帝メンバーに飲ます』でした。 でも乾汁って金積まれても飲みたくありませんよね。 |
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