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「あ、とべ様ッひどっ、い!」 よほど傷ついたのか、はたまたただのショックなのか、女子は嗚咽をあげていた。それをただおろおろとしながらどうしようかとなっているミチル。 「あぁ、もうまどろっこしいな!」 撫子は思わず言葉をポロッとこぼした。 「あの…あっとー…元気出せ?」 差し障りのない励ましの言葉をミチルがかけた。 「ッなによ!付いて来て!私を笑いに来たの!?ふんッ笑いなさいよ!チョコすら受け取ってもらえなかった女だもん笑えるでしょう!?」 「なッ笑うわけねーじゃん!」 「じゃあ何しに来たって言うのよ!そもそもなんでミチルなんかが氷帝に来てたの!?」 「そ、れは…。」 はーい、撫子が呼びましたー。 「あんた…まさか椿崎撫子のこと…。」 「んなわけねーよ!誰があんなデカ女!」 おい、ゴルァ、奥歯ガタガタ言わせるど。 「だったらなんなのよ!」 「あ…え……。」 「幼なじみだからって幼なじみだからって、それだけで…恋は実のならないって言われるのに…!」 「な、そ…そんなことねぇぜ!俺はお前が…ッ!ススススッ!」 自暴自棄になっていた女子をミチルは驚いたものの話が飛び跳ねついに自分の気持ちをポロッと言いかけている。 いけー!やれ、そこだぁあ! 「スススッ…スマートフォンがうらやましいと思っただけだし!」 「…は?」 は? 撫子も思わず女子と同じ反応をしてしまった。 「俺って?なんて言うか?流行に乗る男だし?だけど縛りで?まだ変えれねぇし?」 「…………はぁ…。クスッ。」 女子は呆気にとられそれから先ほどまでの態度を一変させて、クスリと笑った。 「…んだよ。」 「べっつに、あー…私はなんでこんな男を……。」 「ぁあ?今、俺のこと貶したか!?」 「…ミチル、これあげる。」 そう言って女子がミチルに突き出したのは先程跡部に受け取ってもらえなかったチョコ。 「は?それは跡部にやろうとしたやつじゃねーか。」 「うん、そう。私の本命チョコ。初めは別の人に渡そうとしたけど、代わりに跡部様に渡そうとした。それからまた別の人本人に渡そうと思って。」 「……は?」 「だから、私の本命チョコ、あげる。じゃあね、ミチル。また明日。」 女子は清々しい笑顔を見せながら、少々頬を赤く染めこの場を去っていった。そして残されるは状況がうまく飲み込めないミチル、と萌えまくってバレない程度に悶えている撫子。 「……………あ、ぁぁあぁあああ!?ちょっ、これ本めッ!?え、あぁああ!?ちょ、オイ待てよ!」 ミチルは長い沈黙の後漸く意味が分かったようで慌てて女子の後を再び追いかけていった。なんともデジャヴな出来事である。 そして撫子はミチルが完璧に姿を越したことを確認して思いの丈を叫んだ。 「「萌えぇぇえええええ!!」」 「…ん?って忍足!?何時の間に!?」 思いの丈が誰かの声とシンクロしたと思って周りを確かめてみればそこには忍足の姿があった。 「結構始めからや。いやー…ええもん見せてもろうたわ!今時あんな甘酸っぱい馴れ初めもあるんやな…うっとりや。」 「ホンマやなー。ホンマやなー!」 「これを無粋にBLに置き換えんなや?」 「あらイヤだ。釘を差されてしまったわ。まぁ、いいや。確かにこの甘酸っぱさは永久保存だわね。勿論NLで。」 「せやせや。…よし、跡部ん家行こか。」 「その前にリア充になるべき彼女と福士ミチルに一言言わせてくれ。」 「おん、ええで?俺も言いたい思うとったところや。」 「よし、せーの!」 「「リア充末永く爆発しろぉお!」」 よし、と二人は一仕事終えた感じで跡部の家へと向かった。勿論、今から始めることが今回のメインイベントだと思われる。 |
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